AI insideは8月2日、同社が提供開始する生成AIの新サービス「Heylix」の発表会を実施した。
発表会には、AI inside 代表取締役社長CEOの渡久地拓氏が登壇し、実際にサービス画面を操作しながらデモンストレーション形式で製品を説明した。
本稿では、その一部始終を紹介する。
「AIは実証実験ビジネスを行うもの」という常識を打ち破った歴史
渡久地氏は、生成AIの新サービス「Heylix」の紹介を行う前に、AI insideの創業からの歩みを紹介した。
「当社は2017年に『DX Suite』を発表しました。この時代、『AIは実証実験ビジネスを行うもの』という認識だったので、AIそのものをサービスとして売ることはあまり行われていませんでした。そうした中、2017年に我々はAI SaaSのトップランナーとしてDX Suiteを発表し、今ではAI OCR(AI技術を活用したOCRの仕組みやサービス)のジャンルでシェア1位を獲得するまでに成長しました」(渡久地氏)
2021年には、「AnyData」という誰でも簡単にノーコードでAIを作成できるツールを発表。このサービスは、AIを作って運用し、さらに再学習するという機能を持ったものとなっている。
同サービスの特徴は、手書き文字や活字を含む文字情報のテキストデータ化から、画像データを基にした物体検出・画像分類、表データを基にした数値の予測・判断など、あらゆるデータに対応していることだ。加えて、同サービスはデータを投入するだけで、自動でデータ加工などの準備プロセスから、全てを任せることも可能だという。
ユーザーの業務を支援する相棒「Buddy」
「DX Suite」や「AnyData」に続く形で、今回発表されたのが、AIエージェント「Heylix(ヘイリックス)」だ。
「Heylix」は、業界・業種を問わずあらゆる業務を汎用的に支援するAIエージェント。ユーザーは「Heylix」に指示を出すだけで、マルチモーダルかつ自律的にタスクをこなしてくれるAI「Buddy(バディ)」を生成できるサービスとなっている。ユーザーはこのBuddyの支援により、高度なDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現することが可能になるという。
「AIエージェント『Heylix』が生成したマルチモーダルAIは、ユーザーの業務を支援する相棒のような性質を持つことから『Buddy』と名付けられました。そのBuddyを作成・共有してくれるユーザーを『Buddyアーキテクト』と呼びます。加えて、生成されたBuddyはユーザー間でシェアできるため、ネットワーク効果が働き、Buddyの数が増えるほどにユーザーが享受できる恩恵も高まります」(渡久地氏)
また、渡久地氏はこの「Heylix」のリリースの背景について、以下のように述べた。
「昨今の生成AI・LLMの台頭は、働き手不足の解消・生産性向上を図り、日本の国際競争力を向上させる大きなチャンスと言えます。生成AI・LLMは非常に汎用性が高く、人間のあらゆる業務を支援可能と考えられているものの、いまだに本質的なビジネス活用は進んでいません。いち早くこの革新的なテクノロジーのビジネス活用を推進し普及させることができれば、企業は売上・利益を大きく増やし、日本経済を成長軌道に回帰させることができると考えられます」(渡久地氏)
アルファ版の「Heylix」を利用したある銀行では、数十名のBuddyアーキテクトを集めて数百にも及ぶBuddyを作成したという事例も紹介された。
同行では、ベータ版リリース後に約300のBuddy稼働を目指しているほか、2022年6月から提供されている実践型AI人材育成プログラム「AI Growth Program」を通じて、Buddyアーキテクトの増加も目指す考えとのことだ。
プラットフォームから生まれるAI数を10倍以上に
先述した通り、「Heylix」は一部の既存顧客へ先行提供されており、すでに300を超えるBuddyのアイデアが誕生している。
同社は、まずは金融・保険・製造・流通・自治体などの業界を中心にクローズドβ版を提供し、エンタープライズサーチを生成する機能なども追加したうえで、2023年中に正式版の提供を開始する計画としている。正式提供後は、Buddyをシェアし合えるマーケットプレイスも構築する構えだ。
また今期中に、1,000人以上のBuddyアーキテクトを創出し、AI inside のプラットフォームから生まれて利用されるAIの数を現在の10倍以上に増加させることを目指す。
この実現のために、すでにユーザーやISVパートナー(独立系ソフトウェアベンダー)との連携を推進するとともに、生成AI・LLMの伴走型リスキリングプログラムにてBuddyアーキテクト育成のための特別講座も開始している。これらの取り組みを通じて、生成AIビジネスの本格的に拡大していく方針だ。
サービスの概要は以下の通り。
・提供開始日:2023年8月3日(クローズドβ版)
・課金体系:従量課金
・価格:1,000トークンあたり10円