クアルトリクスは8月1日、生成AIを実装した次世代のプラットフォーム「XM/os2」を発表した。また、同社は今後4年間、AIのイノベーションに5億ドルに投資することを発表した。

米Qualtrics 製品・エンジニアリング担当プレジデントのブラッド・アンダーソン氏は「AIはクアルトリクスにとって目新しいものではない。これまで何年にもわたり、AIはわれわれのテクノロジーの最先端にあり、われわれの成功の礎。AIの信頼性はデータによって決まるが、われわれは先陣を切ってその研究を進めてきた」と述べ、同社がAIの知見が豊富であることをアピールした。

  • 米Qualtrics 製品・エンジニアリング担当プレジデント ブラッド・アンダーソン氏

また、アンダーソン氏は、「AIは経験から学習し、変化に適用できることから、企業、ビジネスに人間らしさをもたらすと考えている。AIは人間の感情を理解し、人間と新しい環境を構築でき、エクスペリエンスマネジメントを進歩させる可能性がある」と語った。

そして、アンダーソン氏は「生成AIは回答を提供するだけでなく 新たな問題を見つけて、それに対するインサイトを提示する。われわれは、人間のエクスペリエンスを 正しいアクションにつなげることをスピードアップすることに注力していく」と、同社の生成AIに対する姿勢を説明した。

自社AIと生成AIで、パーソナライズされたコンテンツと推奨事項を提供

同社はこれまで、年間35億以上の会話やインタラクション(コールセンターの会話、チャットログ、サーベイへの回答、ソーシャルメディアの投稿、製品のレビューなど)を分析して、エクスペリエンス・プロフィールデータベースを作成している。

XM/os2は、このデータベース、同社のAIと生成AIを用いて、パーソナライズされたコンテンツと推奨事項を提供していく。また、XM/os2はセキュリティと制御を備えており、大規模言語モデルがトレーニング目的で顧客の機密データを保持しないようにする。

XM/os2の中核となるサービスは、Experience ID、iQ(R)、xFlowの3つのインターコネクト(データセンターやクラウドサービスを閉域のネットワークで接続する)サービス。

これらのサービスにより、企業がAIを活用して顧客プロファイルを作成し、フィードバックデータを分析して傾向とギャップを抽出し、組織全体での行動を促進できるようにする。

xFlowに追加予定のGPT機能は、企業が利用しているクアルトリクスのシステム内で、OpenAI アカウントを使用して、GPTを利用したアクションを自動的に起こすトリガーとして機能する。

生成AIが動画から文字で要約を自動作成

例えば、カスタマーエクスペリエンス管理ソリューション「Qualtrics FrontlineXM」では、生成AIにより、フロントラインの従業員の生産性を向上し、顧客の問題により早くより共感を持って解決できるようにする。XiD内の顧客のプロフィールデータに基づいてパーソナライズされた対応を推奨・生成することができる。

また、従業員エクスペリエンス管理ソリューション「Qualtrics XM for People Teams」では、生成AIの機能が、従業員のフィードバックと行動データを自動的にまとめ、そのデータを各従業員の全体的なウェルビーイングと関連付ける。

これにより、マネージャーは従業員がどのように感じているか、そしてサポートするために何ができるかを継続的に知ることができる。

ビデオによって顧客のフィードバックを得られる「Qualtrics Video Feedback」では、生成AI機能により、Video Feedbackのトランスクリプトから主なトピックを抽出し、そのトピックにどのように答えているか 関連する動画を引用し、インサイトを提示する。そして、組織全体で共有・理解できる簡潔な要約を即座に生成する。

  • 消費者が投稿した動画を文字で要約してくれるので、すべての動画を確認する手間が省ける

  • レポートを作成する時など、AIが、消費者が重要なポイントを話している瞬間の動画を切り抜いてくれるので、分析結果だけでなく 消費者が話している状況を確認できる

SAPとは現在もアライアンスを締結

なお、同社は今年3月、テクノロジー投資会社のSilver Lakeとカナダ年金制度投資委員会(CPP Investments)に125億ドルで買収されたことを発表した。これに伴い、2019年に同社を買収したSAPは同社の株を売却した。

こうした買収後の現状について、クアルトリクス カントリーマネージャー 熊代悟氏は、次のように説明した。

「現在、SAPとはパートナーシップとして、アライアンスを結んでいる。日本ではあまり知られていないが、投資してもらえるのは、XM(Experience Management)への期待度が高いからといえる。われわれは次のフェーズに歩み始めた」

6月末からは、Silver Lakeからさまざまな形でサポートを受けており、熊代氏は「引き続き、業界を牽引するする企業として活動していく」と、投資を追い風に攻めの姿勢で事業に臨むことを示した。

  • クアルトリクス カントリーマネージャー 熊代悟氏