パナソニック ホールディングス(HD)は7月31日、2024年3月期(2023年度)の連結純利益が前年度比73%増の4600億円になる見通しだと発表した。過去最高益としていた従来予想から1100億円の上方修正となる。2023年4~6月期の純利益は前年同期比で4.1倍の2009億円だった。液晶パネル製造子会社の解散による繰り延べ税金資産の計上が1213億円、電気自動車(EV)向け電池などを米国内で生産販売する企業を優遇する米インフレ抑制法(IRA)関連の補助金などが268億円、純利益を押し上げた。
「純利益は過去最高になる見込みだが、それはたまたまタイミングが重なるだけ。気持ち的にハイにはなっていない。収益性をどんどん向上させていきたい」と、取締役専務執行役員グループCFOの梅田博和氏は語った。
IRA補助金は現金化をするためには複数の手段があり、2023年度は「直接給付」を選択する見込み。「米国における車載電池事業への投資に活用するとともに、北米事業の拡大に向けて、テスラ社といった顧客とも有効活用していく」(梅田氏)。
268億円のうち180億円を戦略投資に充てる。主に、「2170」と呼ばれるタイプの円筒形リチウムイオン電池を量産する予定のカンザス州の新工場(現在建設中)や、新型の「4680」を生産する和歌山工場に投資する。
また、傘下のパナソニック エナジーは同日、SUBARU(スバル)に電気自動車(EV)向けの電池を供給する検討を始めたと発表した。スバルはパナソニック エナジーから調達した電池を、群馬県内に新たに建設するバッテリーEV専用工場などで2020年代後半から生産開始する予定のバッテリーEVに搭載することを視野に入れる。なお、パナソニック エナジーはマツダへの供給も検討している段階。脱テスラ依存への展開が進んでいる。
2023年4~6月期の売上高は前年同期比3%増の2兆297億円だった。デバイス領域のパナソニック インダストリーは、ICT分野や、中国FA市場における市況悪化の影響に加え、2020年度に実施した半導体事業の譲渡に伴う商流変更による減販などにより、555億円の減収となった。「2024年初頭以降に挽回が図れるだろう。生成AIサーバーの需要拡大も見込んでおり、本格的な回復は2024年度になると予測している」(梅田氏)
営業利益は同42%増の904億円だった。傘下でサプライチェーン管理システムを手掛ける米ブルーヨンダーが好調で53億円利益を押し上げた。同社は5月に開いた説明会で、SaaSプラットフォームの構築と、収益性の向上に向けた2億ドルの投資計画を発表している。「投資を止めれば、利益はすぐに上がる状況だ」と、梅田氏は補足する。
またパナソニックHDは、2023年度からは、成長フェーズに向けて、事業ポートフォリオの見直しや入れ替えも視野に入れた経営を進めていく考え。グループ共通戦略との適合性と、事業の立地・競争力の観点で、事業ポートフォリオの見直しを今年度中に方向付け、順次実行していくとのことだ。