日立製作所の鉄道システム事業におけるグループ会社である日立レールは7月31日、イタリア・ジェノバ市の交通当局であるAMTと新たな契約を締結し、同社が導入した同市の公共交通インフラ全体を結ぶという「360Pass アプリ」を、60万人の同市市民と同市を訪問する年間350万人の観光客が利用可能になると発表した。
1年間のトライアルを成功させたという同アプリは、同市で「GoGoGe」として知られているとのこと。
同サービスは、市内の公共交通機関と民間交通機関を連携させることで、同市の在住者や同市を訪れる人が、複数の交通機関を利用した旅程の計画、予約、最安値の運賃の支払いが可能になる。2023年7月から利用可能であり、ダウンロードは無料。
同サービスにより同市では、バス(663台)、バス停(2500か所)、地下鉄(年間利用者数1500万人)、ケーブルカー(2基)、登山鉄道(1路線)、公共エレベータ(10基)、郊外バス(2路線、全長50km)をデジタルで接続している。利用者は携帯電話のボタンを押すことで、電気自動車のレンタルや、駐車場料金の支払い、電動スクーターがどこにあるかの確認なども可能。
同アプリは、乗客が最速で最も便利なマルチ・モーダルな旅程の候補やリアルタイムの交通情報を提供するとしている。また乗客は、アプリを通じてバスの混雑状況を確認し、混雑していない交通バスを選択できる。
同社が実施した 「グローバルにおける公共交通機関に対する意識調査」によると、混雑状況に関するリアルタイム情報を見ることができれば、73%の人が公共交通機関を利用する可能性が高いことがわかった。同アプリにより、従来の紙のチケットを購入するために並んだり、異なる交通サービスのために複数のアプリをダウンロードしたりする必要が無くなった。
同アプリは、乗り物や街中の駅や停留所に設置した5G Bluetoothセンサーで、モバイル・アプリを利用した乗客がいつ搭乗し、どのくらいの距離を移動し、いつ降りたかを識別するとのこと。これにより、利用者は異なる交通手段を使用している場合でも、最安値の運賃を支払うことができるとしている。
同アプリは、利用者が市内のバス、トラム、地下鉄を利用した際の交通費が、1週間チケットの値段である17.5ユーロ(約2700円)に達したことを自動的に検知する。その時点以降、その週の残りは無料で移動でき、利用者にはそれ以上の費用は請求しない。
これにより、交通機関を定期的に利用する乗客はかなりの節約が可能になるといい、例えば、週5日バスと地下鉄で通勤している乗客は、自動的に毎週12.50ユーロ(約1900円)を節約できるとしている。