AVEVAは7月25日、日本の製造業のDXを推進する製品戦略説明会を開催。製造業を取り巻く環境とビジネスの変化をうけ、日本企業のデータの利活用が重要な課題であり、そのためにはどういった課題を解決する必要があるのかなどに関して説明を行った。

英国ケンブリッジに本社があるソフトウェアベンダーのAVEVA。2021年には時系列データ管理ソフトウェア企業のOSIsoftを統合し、2023年にはシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)によって買収され、同社の完全子会社となった。現在、主にコンピューター支援設計(CAD)ソフトウェアを中心に事業展開し、石油や化学、食品など約2万社の顧客を抱えているという。

最初にAVEVA バイスプレジデント 日本統括の小暮正樹氏が登壇。「製造業において労働力不足や設備の老朽化、データのサイロ化が課題であり、これは世界共通の問題」だと述べた。特にデータに関しては、企業が利用可能なデータのうち68%が利活用されていないという調査結果を提示し、海外企業も同じ課題感をもっているとした。

  • AVEVA バイスプレジデント 日本統括の小暮正樹氏

    AVEVA バイスプレジデント 日本統括の小暮正樹氏

しかし、日本はそうした世界の動きと比べてもさらに遅れを見せている一面があるという。「日本では情報を自社内の部分最適で生産性を高めていく傾向にあるのに対し、世界では企業の垣根を超えた情報の最適化を進めている」と小暮氏は語り、そうした現状が格差を生んでいるとしている。

また、説明会には東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリストの福本勲氏もゲストとして登壇。2023年4月17日から21日まで開催されていた製造業界最大規模のイベント「ハノーバーメッセ 2023」に参加し、見えてきたことを含めた世界の製造業の動向を述べた。

  • 東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリストの福本勲氏

    東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリストの福本勲氏

近年の製造業界では、ドイツ政府が2011年に発表し第4次産業革命とも位置付けられる「インダストリー4.0」が重要なキーワードだという。

インダストリー 4.0が発表されて以降、化石燃料を使用しないカーボンニュートラルへ移行が進んでいるほか、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行や、ビジネスモデルが集中型から多様な企業で構成される分散型とネットワーク側を掛け合わせたものへと移行することが求められている。

その中でハノーバーメッセ2023では、ソフトウェアの比重が高まっており、デジタルサービスに焦点をあてた事業展開を進める企業や、業界を超えたエコシステムを構築してデータを共有し、個社ではなくエコシステム同士で戦うジネスモデルの実現といった部分に注目が集まっていたという。また、「GAIA-X」や「Catena-X」「Cofinity-X」といった団体が設立されていることから、データ共有圏による取り組みの加速も強まっていくだろうとした。

さらに、ハノーバーメッセ2023から見た最新テクノロジー活用の動きとしては、「インダストリアルメタバース」「サイロ化されたデータの統合・利活用のソリューション」「OpenAI」などを紹介。

そうした中、日本企業において今後、サステナビリティやレジリエンス意識が高まることで、DPP(Digital Product Passport:デジタル製品パスポート) の法令化への対応などのユースケースの具現化が求められてくるとしている。また、人にしかできない仕事が大きく変化することで継続的教育も必要になるほか、水平垂直方向のプレイヤーの連携、双方を巻き込んだエコシステムの構築が進むだろうとした。

  • 昨今の欧州の動きと日本企業への影響

    昨今の欧州の動きと日本企業への影響(提供:AVEVA)

また、日本のDXが進まない原因についても言及し、サプライチェーンがグローバルに広がる中で安定性かつ強靭性を確保するには、日本においてもデータ共有圏の構築が必要となってくるだろうと指摘していた

こうした話を踏まえ、最後にAVEVA ソリューション営業本部 クラウドソリューション営業部長の村林智氏が登壇。製造業の課題解決を支援するデータ活用のポートフォリオを紹介した。

  • AVEVA ソリューション営業本部 クラウドソリューション営業部長の村林智氏

    AVEVA ソリューション営業本部 クラウドソリューション営業部長の村林智氏

同社が提供するSaaS基盤「AVEVA Connect」の各種データを統合する「AVEVA Data Hub」を利用することで、運転・生産、最適化、設計・建設のインダストリアルインフォメーション全体をカバーできるという。

  • コネクテッド・コミュニティを実現するプラットフォーム

    コネクテッド・コミュニティを実現するプラットフォーム(提供:AVEVA)

また生成AIの製造業における最新の取り組みとして、データソースを超えた原因追究やデジタルツインの活用などの想定ユースケースを示し、生成AI技術の実装に向け動いていることも述べていた。