「働きがいのある会社」に関する調査・分析を行うGreat Place To Work® Institute Japan(GPTW Japan)は7月26日、2023年版日本における「働きがいのある会社」若手ランキング 発表会を開催した。
会見にはリクルートMS HRM統括部 HRMサービス開発部 研究員の武石美有紀氏、レバレジーズ 執行役員の藤本直也氏、レバレジーズの古川隼氏、GPTW Japan 代表の荒川陽子氏が登壇した。レバジーズは大規模部門のランキングの首位に輝いた。
本稿では、その一部始終を紹介する。
若手の働きがいにつながるのは「仕事に行くことの楽しみさ」?
「働きがいのある会社」若手ランキングとは、「働きがい認定企業」(2021年7月~2022年9月調査実施)の中から、特に若手の働きがいに優れた企業を規模別に上位5社選出したもの。
日本で2020年に新設されたランキングで、今回で第4回を迎えた。評価観点は、「若手の従業員アンケートの結果」と「若手従業員比率などの基本会社データ」の2つ。
日本社会では少子高齢化社会における優秀人材の獲得と定着が多くの企業の課題となっているのに加え、コロナ禍で仕事に対する若手の価値観の変化はますます加速していると考えられるという。こうした背景から、GPTW Japanは若手の「働きがい」に着目し、積極的に施策を打っている企業にスポットライトを当てるべく同ランキングを発表しているそうだ。
今回の2023年度版で上位5社に選ばれた各部門(従業員規模別)の順位は以下の通り。ランキングは、企業規模に応じて「大規模部門」「中規模部門」「小規模部門」の3つに分けられている。
最初に登壇した荒川氏は、「若手ランクイン企業の去年と今年の傾向の変化」について紹介した。
「昨年と比べて会社全体の全設問平均は、4ポイント上昇する結果となりました。特にスコアが上がった設問は、『報酬』『利益分配』『能力開発』の3つです。また、若手のみの結果を見ても全設問平均が2ポイント上昇しており、ほぼすべての設問でアップを確認しました。中でも『報酬』が最もスコアアップ、『利益分配』『長期勤続意欲』『能力開発機会』も高いことがうかがえます」(荒川氏)
今年の調査の中で上位5社にランクインした企業と不認定となった企業を比較してみると「仕事に行くことが楽しみである」という質問の差が最も大きい結果となった。
この「仕事に行くことが楽しみである」という設問の差が1番大きかったのは昨年も同様だが、この差異は、ランクイン企業と不認定企業間で拡大している傾向にあるという。
さらに、「仕事に行くことが楽しみである」という設問と相関が強い5つの項目を見てみると、「自分らしくいられる」「安心して働ける」という心理的安全性に関する設問との相関が高いことが判明している。
ランキング1位の企業が語る「若手の働きがい」のための施策
続いて荒川氏は、若手の働きがいを高める施策事例として「年齢を問わない抜擢の仕組み」「入社1~2年目社員への手厚いフォロー(2年間の定期的な面談、研修実施)」「ひとりひとりの個性の把握とキャリアデザイン支援」といったキーワードを挙げた。
これらの施策を実践し、大企業部門での若手ランキングで1位を獲得したレバレジーズだ。藤本氏は、同社の人事マネジメントのポイントとして、「個人選択型HRM」というシステムを導入していることを紹介した。
「個人選択型HRMとは、従業員が自律的・自己選択的に、仕事・働き方・キャリアに関する選択を行う機会を増やす制度やマネジメントです。労働者の価値観の多様化、労働力人口の減少、『キャリア自律』の必要性、『ジョブ型』の導入、『働き方改革』など、 組織・人事マネジメントの潮流は、個人が選択する場面を増やす方向に向かっています。そうであるならば、個人にとって魅力的であり、そして組織にとっても有益な選択肢を社内に多くデザインすることが、企業人事がとるべき次の一手となりそうです。人材の流動性が高まり、企業が個人から選ばれる場面が増えていくこれからの時代のHRMにおいて、重要なのは、社内キャリア形成の魅力と有効性を高めていくことでしょう」(藤本氏)
レバレジーズは「離職指標の改善」と「エンゲージメント指標の最大化」のために「個人選択型HRM」を導入しており、その効果として、個人選択を取り入れることで、離職率が低下し現場力が上がっているという。
「個人選択を進めるには、 採用から入社後まで一貫した施策が重要です。特に、キャリアに前向きな社員を採用することが全てのスタートとなるため、採用やオンボーディングといった初期段階が8割重要といっても過言ではないです。また、社員にキャリアそのものの面白さを感じてもらうために、早期抜擢や公募を通したキャリア選択の速さと広さを実現することが大切です」(藤本氏)
説明会に登壇した古川氏は、新卒入社で2年目からチームの責任者を任されていたといい、同社の若手でもチャンスを得られ、またキャリア選択を幅広く行える裁量の大きさが分かる。
最後に、藤本氏は以下のような言葉で発表を締めくくった。
「人財の確保、定着、パフォーマンス最大化において、個人が自分独自のwillを保有し、個人のwillと企業のwillを一致させることが重要です。それは働く個人が幸せになるだけではなく、企業の戦略策定能力、実行能力の上昇、離職の低下にも寄与します。個人選択型HRMを実行するには、採用やオンボーディングから始まり、マネジメント思想や企業文化を変革する必要があります。労働者を取り巻く環境が変化している現代において、個人選択を中心とした労働環境の構築というのは1つのキーワードとなるのではないでしょうか」(藤本氏)