自由民主党デジタル社会推進本部は7月27日、「AIの進化と実装に関するPT(プロジェクトチーム)」(AIPT)による会議を開いた。

同会議には、デジタル社会推進本部のほか、経済産業省、日本マイクロソフト、アマゾン ウェブ サービス ジャパンが参加し、LLM(大規模言語モデル)の開発・利用を推進するために必要となる計算資源の不足と調達をメインテーマとして意見交換が行われた。同日にはメディアブリーフィングが開かれ、会議の内容が発表された。

デジタル社会推進本部は2010年から毎年、民間から広く知見を集めながら、デジタル施策に関する提言である「デジタル ニッポン」を取りまとめ、政府に申し入れている。

Azure OpenAI Serviceの利用が国内環境で完結

経済産業省は、すでに発表されているさくらインターネットソフトバンクが同省の支援を受け、クラウドインフラを整備するプログラムを発表した。

アマゾン ウェブ サービス ジャパンからは、2023年7月3日発表の日本企業向けのLLM開発支援プログラムの内容が紹介されたという。

日本マイクロソフトは官民におけるセキュアな環境でのLLM活用を支援すべく、2023年7月に国内の東日本リージョンのデータセンターへAzure OpenAI Serviceを提供するサーバを設置したと発表した。これにより、Azure OpenAI Serviceのさまざまな機能の利用が国内環境で完結できるようになった。機密性の高い情報が国外のデータセンターを経由することなく、企業や官公庁はAzure OpenAI Serviceを利用できるようになる。

  • Azure OpenAI Serviceの利用が国内環境で完結することになった

    Azure OpenAI Serviceの利用が国内環境で完結することになった

従来、Azure OpenAI Serviceは欧州と米国、2つのリージョンのデータセンターからサービス提供がなされていた。そのため、政府・自民党からは日本国内での官民の安全な利活用を進めるうえで、国内リージョンのデータセンターからの提供に期待を示していたという。そうした期待や日本政府によるAI利活用環境の整備に対する方針などを鑑みて、日本マイクロソフトは今回の取り組みを実施したそうだ。

GPT-3.5がプレビュー提供、GPT-4は政府機関や一部の規制産業に

東日本リージョンのデータセンターでは当面の間、GPT-3.5ベースの機能がプレビュー提供され、民間企業が試験利用することができる。

日本マイクロソフトは今後、政府機関や規制産業など、閉域で低遅延な環境を要望する顧客に限定して、GPT-4ベースの機能を提供していく方向で調整しているという。政府AI戦略チームの議論を経て、2023年秋ごろを目途に技術評価が可能になる予定だ。

  • 日本マイクロソフトがAIPTで発表した内容のまとめ

    日本マイクロソフトがAIPTで発表した内容のまとめ

自民党デジタル社会推進本部 本部長代理 平将明氏は、「デジタル社会推進本部では、AIPTがまとめたホワイトペーパーに沿って、政府が積極的にAIを活用できるような方向性を示し、提言している。今回の日本マイクロソフトによる提案を実際に調達するかどうか、ルールに則り政府によって検討が進められるだろうが、我々が抱いていた懸念を解消する重要な提案だった」と述べた。

  • 自民党デジタル社会推進本部 本部長代理 平将明氏

    自民党デジタル社会推進本部 本部長代理 平将明氏

日本マイクロソフトはAzure OpenAI Serviceに関して、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)の取得に向けた取り組みを進めているようだ。ISMAP審査委員会にすでに申請書類を提出しており、最短で8月末の審査委員会にて認定の可能性があるという。

  • 日本マイクロソフトのISMAP取得に向けた取り組み

    日本マイクロソフトのISMAP取得に向けた取り組み

Azure OpenAI Serviceでは、OpenAIのAIモデルを利用するだけでなくオープンソースモデルや、Huuing Faceの公開済みモデルを利用して、企業や組織独自のAIを開発することも可能だ。

自由民主党 デジタル社会推進本部本部長 衆議院議員の平井卓也氏は、「世界各国がAIの競争状態にある中で、ルールを作る一方、研究開発も進んでいる。その中で、日本にも『基盤モデルを自らの手でやりたい』という人たちがたくさんいる。そうした方々に開発環境を提供するという意味では、日本にとって有力な選択肢が増えたということだと思う」と語った。

  • 自由民主党 デジタル社会推進本部本部長 衆議院議員 平井卓也氏

    自由民主党 デジタル社会推進本部本部長 衆議院議員 平井卓也氏