QPS研究所は、米・Addvalue Innovationと共同で、2023年6月に打ち上げられた小型合成開口レーダー(SAR)衛星のQPS-SAR6号機「AMATERU-III」に搭載された「オンデマンドIDRS(Inter-satellite Data Relay System)データ接続機能」(以下「IDRS」)の初期実証運用に、衛星の機能を試験・調整している中で成功したことを発表した。

  • QPS研究所のSAR衛星の軌道上でのイメージ。

    QPS研究所のSAR衛星の軌道上でのイメージ。(出所:QPS研究所 Webサイト)

QPS研究所は、36機の衛星コンステレーションにより、平均10分間隔で世界中のほぼどこでも任意の場所を観測できる衛星データ提供サービスの実現を目指している。そして同社は現在、独自に開発した小型SAR衛星「QPS-SAR」を3機運用中だ。3機の内訳は、1号機「IZANAGI」と2号機「IZANAMI」、そして6号機のAMATERU-IIIである(4号機・5号機はイプシロン6号機の打ち上げ失敗のため衛星軌道への投入が叶わなかった)。

QPS研究所は、夜間や悪天候でも高精細・高画質なSAR画像の提供を行っており、今回の発表の前日(7月25日)には、AMATERU-IIIの高精細モード(スポットライトモード)で、アジマス分解能(衛星の進行方向)が46cm、レンジ分解能(衛星のマイクロ波を照射する方向もしくは衛星の進行と直交する方向)が39cmという高精細の画像を公開し、日本のSAR衛星としては分解能の最高記録を樹立している。

  • AMATERU-IIIが、日本最高記録となるアジマス分解能46cm×レンジ分解能39cm(オフナディア角37度)で取得した、米・ネバダ州ラスベガスのスポットライトモードSAR画像。

    AMATERU-IIIが、日本最高記録となるアジマス分解能46cm×レンジ分解能39cm(オフナディア角37度)で取得した、米・ネバダ州ラスベガスのスポットライトモードSAR画像。(出所:QPS研究所 Webサイト)

AMATERU-IIIには、Addvalue Innovationが開発したIDRSが搭載されており、今回はその常時接続を実現したことが発表された。IDRSは、あらゆるLEO(低軌道)衛星との接続を可能にするもので、これにより高度1000kmまでのすべての軌道傾斜角でLEO衛星との持続的なデータ接続と転送サービスへのアクセスが可能になり、これまでは制限が多かった地球上の受信局との調整が不要になるという。

IDRSは、イタリアのViasatによって運営されているGEO(静止軌道)衛星の衛星ネットワーク「ELERA」コンステレーションとBGAN地上インフラに接続することで実現されており、グローバルで最先端のL帯カバレッジと接続性がほぼリアルタイムで提供される仕組みだ。

IDRSの利用により、高品質なSAR画像を迅速かつリアルタイムに運用することができるようになり、今後、衛星コンステレーション全体をリアルタイムに管理することで、ユーザーへの確実で最適なSAR画像提供を実現することが期待されるという。

QPS研究所の大西俊輔代表取締役社長CEOは、「私たちはAddvalueと協業することで、SAR画像データの運用を強化し、ユーザーの要求に迅速に対応できることを大変嬉しく思います。AddvalueのIDRSは、タスクオーダー配信し、リアルタイムで衛星群を監視することで、革新的なSAR衛星群の管理と機敏性を向上させることができると確信しています。QPS-SAR6号機の打ち上げでAddvalueと協力することで、高品質のSAR画像をタイムリーに世界に提供するという目標を早期に達成することができると考えています」とコメントを残している。