TrendForceによると、Appleが2023年秋にも発売するであろう次世代iPhone「iPhone 15シリーズ」のサプライチェーンにおいて、2つの重要コンポーネントに潜在的な供給懸念が引き起こされているという。

それによると1つはCMOSイメージセンサで、もう1つはチタン合金フレーム。いずれも製造に際し、克服すべき課題が残されており、いまだに完全な解決に至っていないという。

新構造の採用でCMOSイメージセンサに供給不足懸念

TrendForceの調べによると、iPhone 15シリーズに採用されると見られているソニーの新たな4800万画素CMOSイメージセンサでは、フォトダイオードと周辺トランジスタ(画素切り替えトランジスタと周辺ロジック回路のトランジスタ)を従来の2層構造から3層の積層構造へと変更されているという。

フォトダイオード直下の別ウェハ上にそれぞれのフォトダイオードに対応する画素トランジスタを正確に配置し、導通をとることは難易度の高い技術で、歩留まりに課題があるという。ソニーでは生産数量を増強することで対応を図っているようだが、その供給状況はAppleの要求レベルに達しておらず、次世代iPhoneの初期生産スケジュールに影響を与えているという。

  • フォトダイオードと画素トランジスタと周辺ロジック回路の3層構造を採用したCMOSイメージセンサのイメージ

    フォトダイオードと画素トランジスタと周辺ロジック回路の3層構造を採用したCMOSイメージセンサのイメージ (出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ プレスリリース)

  • iPhone 14とiPhone 15ファミリのCMOSイメージセンサの仕様比較

    TrendForceの独自調査に基づくiPhone 14とiPhone 15ファミリのCMOSイメージセンサの仕様比較 (出所:TrendForce)

一方のチタン合金フレームに関しては、感圧式ボタン構造の不採用とミュートスイッチの開口部の微調整により、サプライヤは生産ラインの再割り当てならびに設定、検証などの必要が生じているという。また、チタンはステンレスに比べて加工手順が複雑なため、生産リードタイムが長くなるという課題もある。

TrendForceでは、次世代iPhoneのチタン合金フレームが最近になっても低歩留まりが続いており、安定した供給が難しい状況となっていることを確認したとしており、この課題に対応するべくサプライヤは生産能力を20~30%拡大させ、生産初期の供給が逼迫したとしても、デバイス全体の発売と供給に影響が出ないような取り組みを進めているという。

これらの課題を踏まえTrendForceでは、Appleは初期の iPhone 15/15 Plusの生産能力不足によって生じたギャップを埋めることを目的に、2023年第3四半期に(iPhone 15 ProならびにPro Maxとなると思われる)Proモデルの生産割合を増やす可能性があるとの見方を示しているが、楽観的なシナリオでは、こうした調整は2四半期の間に異なるモデル間の生産比率を変更することで、年間の出荷計画には大きな影響を与えないところに落ち着き、実際に現状を踏まえれば、そうなる可能性が高いとしている。

ただし、ソニーにおけるCMOSイメージセンサの歩留り改善に時間がかかる場合、iPhone 15シリーズの出荷台数そのものが大幅に減少する可能性があることから、TrendForceでは引き続き状況を注意深く監視していくとしている。