オムロンは、生産現場の搬送効率最適化に貢献する中可搬重量域のモバイルロボット「MD-650」を7月17日より国内向けに発売し、順次グローバルに向けて販売を開始することを発表。また10月にはシリーズ製品として「MD-900」を発売する予定であることも明かした。
近年のものづくり現場では、生産性や品質の向上が求められる一方で、作業者の負担を軽減する現場づくりの重要性が高まっている。製造現場において、材料や仕掛け品、完成品といった重量物の工程間運搬作業は、その繰り返しが作業者の大きな身体的負担につながる。また、自動車業界をはじめとして多品種少量生産体制が浸透していることもあり、昨今は特に搬送回数の増加が課題となっている。そのため昨今の製造現場では、少量搬送の自動化に対するニーズが大きくなっているという。
搬送自動化のツールとしては、大量かつ安定的な搬送が可能なコンベアや、ガイドテープ上を自動で走行するAGVなどの利用が広がっている。しかしこれらは搬送ルートが固定されており、フレキシブル性が低い方法だった。
そういった課題を解決するため、オムロンは、ロボット自身で安全を確保しながら自律的な走行を行うモバイルロボット(AMR)を提供している。人間との協働が可能なAMRは、搬送レイアウトの変更にも対応が可能なことなどから需要が高まっており、今後さらなる市場拡大が見込まれているとする。
そして今回同社が発売に乗り出したのが、中可搬重量域のモバイルロボットだ。具体的には、650kg可搬のMD-650を7月17日に発売し、10月には900kg可搬のMD-900の発売も予定しているという。オムロンのモバイルロボット製品群には、60kgおよび90kg、そして250kg可搬の「LDシリーズ」と、1500kg可搬の大型機「HD-1500」があり、今回の中可搬重量域の製品ラインナップ追加により、製造ラインの全搬送工程において最適なAMRを柔軟に選択できるとしている。
同社担当者は新製品の強みとして、自律走行性能の高さを挙げる。これまでのAMR開発で蓄積したノウハウを活用し、最高速度を秒速2.2mまで向上させた一方で、ナビゲーション機能や障害物回避アルゴリズムの採用により、狭い通路や人が行きかう現場での導入ハードルが低いとする。また、30分の充電で8時間の稼働が可能というエネルギー効率性の高さも特徴の1つに挙げた。
自律走行を行うAMRは、導入台数が増えるほどその制御が複雑化し管理工数の確保が必要となる点が課題となる。オムロンは新製品のもう1つの強みとして、独自ソフトウェア「OMRON Fleet Manager」による統合制御の実現があるとする。
同社のソフトウェアを活用することで、単一システム上で最大100台まで統合制御することが可能だという。またそれらは可搬重量が異なるロボットでも制御できるため、製造ライン全体でのAMR管理が容易に進められ、生産スピードが異なる工程間搬送においても、最適な搬送をリアルタイムで構築できる点が特徴だとしている。
オムロンは、今回の中可搬重量域のAMRラインナップ拡大により、さまざまな業界における搬送工程の負荷軽減に貢献するとしたうえで、今後も安全かつ高品質なモバイルロボットの開発に取り組むとする。併せて、現場での最適な搬送経路を実現するため制御ソフトウェアの強化も進めるといい、今後も生産現場の自動化に向けた取り組みを拡充していく姿勢を強調した。