OKIは7月26日、福岡県に位置する世界遺産の「三池港」において、文化遺産保護を目的とする光ファイバセンサを活用した予防防災ソリューションの実証実験として、同社の「異常温度リアルタイム監視ソリューション」を用いた温度のリアルタイム可視化実験を行ったことを発表した。
明治41(1908)年に開港した三池港は、世界文化遺産である「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産であり、日本国内で唯一、閘門式ドックが現在も稼働している。こうした建造物においては、火災予防の観点から火災検知器を導入する例が多く見られる。しかし、近年は国内外で文化遺産が消失する事例が複数発生しており、火災の発生を未然に検知・通知する、より確実な仕組みが求められているという。
OKIは2019年に、光ファイバセンサを用いて対象物の温度をリアルタイムで監視し防災・減災に寄与するソリューションを発表している。2023年2月から3月にかけて行われた今回の実証実験では、日本ドライケミカル、三池港物流、福岡県、福岡県大牟田市の協力のもと、同ソリューションを用いた温度モニタリングの検証が行われた。
具体的には、三池港の閘門を動作させる機器が設置されたポンプ室の建屋全体と、制御盤や変圧器といった機器類に温度計測用の光ファイバを敷設し、OKIの光ファイバセンサ「WX1033シリーズ」を用いて計測・可視化の検証を実施。同社独自技術の「SDH-BOTDR方式」を採用した同センサは、ブリルアン散乱光のわずかな変化を電気信号の位相シフトに変換して捉える独自アルゴリズムを採用しており、広い測定範囲において温度や歪みのリアルタイムセンシングが行えるとする。
そして実験の結果、あらかじめ設定した温度を超過した際には管理者へと通知が行われ、火災の未然防止につながることが確認できたという。現場作業者として協力した三池港物流からも、文化遺産の管理に有効な成果が期待されるとのコメントを得たとのことだ。
今回検証を行ったソリューションについて、OKIは、1本の光ファイバで建屋全体や各機器の温度を監視できるため、施工しやすくメンテナンスフリーで、なおかつ文化遺産の景観を損なわずに簡単に敷設できる点が強みだとする。同社は今後、日本ドライケミカルと共に、今回の実証実験で蓄積した温度データをもとに温度と機器の不具合の関連性を分析し、三池港閘門における温度計測・監視を2023年9月末まで継続することで、機器保全への活用についても検討を進めていくとしている。