米Appleが「Apple Vision Pro developer kit」の申請受け付けを開始した。WWCC23で発表した空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」の開発用ハードウェアの貸し出しを含むデベロッパーキットだ。
Appleは2024年前半に米国でVision Proを発売し、同年後半に他の国・地域に展開する。同社は発売時に多くのアプリとコンテンツを利用できるようにすることで、新たなデバイスとコンピューティングの市場を開拓するプラス循環を生み出そうとしている。
空間コンピューティング用の新OS「visionOS」はiOS/iPadOSと互換性があり、既存のiOS/iPadOS向けアプリの多くがVision Proに対応する。同社は6月21日に、Vision Pro用のアプリを開発するためのソフト開発キット(SDK)などの提供を開始。シミュレーターを使用してiOS/iPadOSアプリの動作を確認したアプリ開発者の多くが、わずかな調整のみで3D空間において既存の2Dアプリがスムースに機能すると報告している。
次のステップになるのが、パソコンやモバイル向けに作られたアプリではなく、Vision Proの機能やvisionOSのユーザーインターフェイス(UI)を用いてソリューションを生み出す、空間コンピューティング向けに作られたアプリである。WWDC23では、リアルな3Dモデルとアニメーションを使って、心臓の仕組みや疾患、治療の理解を視覚的に深め、医学を学ぶ学生の臨床実習の準備をサポートする「Complete HeartX」(Elsevier Health)、DJアプリ用の空間インターフェイスを開発する「djay」(Algoriddim)など、一部のアプリ開発者の成果が紹介された。
「Apple Vision Pro developer kit」は、そうしたVision Pro向けに設計したアプリに取り組む開発者のサポートを主目的としており、Appleは「visionOSの特徴と機能を活用したアプリを作成する申請者に優先権が与えられます」と明記している。開発デバイスの貸し出しのほか、デバイスのセットアップとオンボーディングのサポート、AppleのエキスパートによるUIデザインや開発に関するガイダンス、アプリ改良の支援、コードレベルのサポートリクエストの追加を含む。
2020年にAppleがMacのApple Siliconへの移行を開始した際にも、同社はMac miniにApple Siliconを搭載した開発用デバイスを用意したが、全てが新しいVision Proではより信頼性の高い選ばれた開発者に貸し出しが制限されると見られている。申し込めるのはApple Developer Programのメンバーで、開発スキルや既存のアプリに関する詳細情報の提出、利用規約への同意が必要。