インターステラテクノロジズ(IST)とエア・ウォーター北海道は7月21日、北海道十勝地方の未利用バイオマスである家畜糞尿から製造した「液化バイオメタン(LBM)」を、インターステラテクノロジズの超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の燃料として使用することを決定した。
宇宙利用が拡大する近年においては、SpaceXのスターシップをはじめとするさまざまなロケット会社の間で、価格・性能・扱いやすさ・入手性・環境性などが総合的に優れた燃料として、液化メタンの採用が増えている。ISTもそのうちの1社で、不純物を含まない高純度メタンを必要とするロケット燃料としての利用に向け、その調達方法を検討してきたとする。
産業ガスを提供するエア・ウォーターグループは、北海道十勝エリアを中心に、家畜の糞尿から発生するバイオガスをLNG(液化天然ガス)の代替燃料となるLBMに加工し、域内で消費するという地域循環型のサプライチェーン構築に取り組んできた。その中で2022年10月には、帯広市にLBMの製造工場を稼働させ、食品工場・LNGトラック・船舶などへの燃料供給に向けた実証を進めているとする。
またエア・ウォーター北海道は、2021年5月よりISTの企業向けパートナーシッププログラム「みんなのロケットパートナーズ」に加入しており、各種試験で使用するLNGの供給やタンクの製造を始め、技術・物資面での支援を行ってきたという。
メタンは、CO2に次いで影響の大きい温室効果ガスであり、牛由来のメタン排出量の低減は、地球温暖化防止における課題の1つだ。また十勝をはじめとする畜産が盛んな地域内では、家畜糞尿に起因する臭気や水質汚染などが社会問題ともなっている。
今回の試験では、バイオガスの主成分であるメタンを分離・精製し、約-160℃で液化したLBMを使用。このLBMは、従来のロケット燃料に使用される高純度メタンと同程度の純度(99%以上)であるとする。これらのことからISTは、性能面に加えて調達性にも優れているとして、エア・ウォーター北海道のLBMをZEROの燃料として採用することを決定したとしている。
なおISTは、北海道大樹町の宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」内の「Launch Complex-0(LC-0)」にて、2023年秋にも、今回採用したLBMを使ったエンジン燃焼器単体試験を予定しているとする。
ISTとエア・ウォーター北海道は、LBMをロケット燃料として使用することにより、ロケット重量の大半を占める燃料をサステナブルにすることで地球温暖化対策に具体的に貢献するとともに、酪農が盛んな北海道に本社を置く企業としてエネルギーの地産地消や環境問題対策に寄与するとしている。