立命館大学、千葉工業大学(千葉工大)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の3者は7月19日、低重力下で超高速度衝突実験を行える装置を開発し、乾燥した粒状物質への超高速度衝突によって形成されるクレーター直径に対して、重力と標的粘着力の影響が逆転する領域を初めて実験的に観察したことを共同で発表した。
同成果は、立命館大理工学部の木内真人助教、千葉工大惑星探査研究センターの岡本尚也研究員、東北大学大学院理学研究科の長足友哉研究員、JAXA宇宙科学研究所(ISAS)の長谷川直主任研究開発員、神戸大学大学院理学研究科の中村昭子准教授、同・山口祐香理大学院生らの共同研究チームによるもの。詳細は、太陽系研究に関する全般を扱う学術誌「Icarus」に掲載された。
小惑星や彗星などの小天体には、太陽系形成初期の情報が保存されており、その形成過程や進化史を理解することは太陽系の歴史を紐解くことにもつながると考えられている。小天体を含む太陽系天体の表面では、外部天体の超高速度衝突(秒速数km~数十km)が継続的に起こっており、表面地形の変化や物質の混合、天体破壊などが引き起こされるという。
このような宇宙での衝突現象を理解するため、室内実験や数値計算を基にした数多くの研究が行われてきたが、重力が衝突現象に与える影響については詳しく理解されていないとする。その理由として、異なる重力下で衝突実験を行える施設が世界的に見てもほとんどなく、重力の効果について調べた実験例が限られていることが挙げられている。小惑星表面は地球と比べて微小な重力環境であるため、小惑星表層での衝突現象を理解するには「低重力下での超高速度衝突実験データ」を数多く取得する必要性があるという。そこで研究チームは今回、低重力条件を模擬できる小型の落下システムを開発し、ISASの超高速度衝突実験施設内に設置することで、低重力下での超高速度衝突実験を実施したとする。
今回開発された装置は、実験チャンバー内に設置された標的容器が落下中(標的にはたらく重力が模擬的に小さくなっている間)に弾丸を衝突させる仕組みで、標的にはたらく重力は0.04G~0.07Gの範囲内に収まるという。