日立製作所は7月20日、担当する業務・職務内容、必須となるスキルなどを事前に公開するジョブ型のインターンシップに関する記者説明会を開いた。

同社は人材マネジメントにおいて、職務を限定せずに人に仕事を割り当てるメンバーシップ型から、職務を明確化・限定してその仕事に人をアサインするジョブ型への転換を進めている。説明会に登壇した人財統括本部 部長代理の大河原久治氏は、「ジョブ型の雇用では、年齢などの属性によらず、本人の意欲や能力に応じた適所適材が実現できる。組織と個人双方の成長や、マインドと文化の醸成につなげていきたい」と、述べていた。

  • 日立製作所 人財統括本部 部長代理 大河原久治氏

    日立製作所 人財統括本部 部長代理 大河原久治氏

日立はその一環として、ジョブ型のインターンシップを2020年より実施している。さまざまな事業領域の具体的なテーマ(約400)と、そのテーマに即したJD(ジョブディスクリプション:職務記述書)を設定し、約3週間にわたってインターンシップを実施(実施期間はテーマごとに異なる)。

インターンシップはオンラインと対面のハイブリッド形式で行い、現場の社員との1on1による活動や成果にフィードバックする。これにより、実際の現場で受け入れることによる就業体験と、職場での対話によるキャリア観の醸成につなげている。

  • ジョブ型インターンシップの具体的なテーマ/ジョブディスクリプション(例)

    ジョブ型インターンシップの具体的なテーマ/ジョブディスクリプション(例)

  • 具体的な就業体験内容(例)

    具体的な就業体験内容(例)

2023年度(25卒)の実施人数は800人を見込んでおり、実施人数は4年で6倍、インターンシップ経験者の採用数は3年で3.5倍になったという。

  • ジョブ型インターンシップの実施人数と経験者の採用人数

    ジョブ型インターンシップの実施人数と経験者の採用人数

2022年度のジョブ型インターンに参加した内々定者の照井雪乃さんは、「自分の就活の軸である『環境問題に関する仕事ができるか』といったことが確認できた。与えられた課題に対してどのように解決するかは学生次第で、主体的に取り組めた。少しハードだったが、一社員として受け入れてくれたことがモチベーションの向上につながった」と、振り返った。

  • 内々定者の照井雪乃さん(お茶の水女子大学 人間文化創成科学研究科 理学専攻 情報科学コース 修士課程2年)

    内々定者の照井雪乃さん(お茶の水女子大学 人間文化創成科学研究科 理学専攻 情報科学コース 修士課程2年)

ジョブ型インターンシップには、「『配属ガチャ』を減らす狙いもある」(大河原氏)という。配属ガチャとは、新卒が希望勤務地や職種、配属先などを選べず、不安を感じる状況を、カプセルトイの「ガチャガチャ」やソーシャルゲームの「ガチャ」になぞらえた俗語だ。

パーソルキャリアが6月に発表した調査によると、入社直後に新社会人が転職サービスに登録した件数が過去13年間で最多となった。また、キャリア観の変化に伴い、自身の適性とのマッチングを早期に確かめようとする就活生の傾向が強まっているという。

「企業にとって、配属ガチャは自律的なキャリアを志向する優秀な若手の人材を獲得する上で課題になってきている。入社前に、自分の希望する仕事や、働く環境のイメージをつかめるようにしていかなければならない」(大河原氏)

また、文部科学省、厚生労働省、経済産業省による三省合意が2022年6月に改正したことにより、現在の大学3年生(25年卒)対象のものから、インターンシップにおいて取得した学生情報を、その後の採用選考に利用できるようになった。

  • インターンシップに関するルール変更

    インターンシップに関するルール変更

日立は2024年6月から始まる選考で、インターン参加者の学生情報を利用する方針。具体的には、学生がインターンにおいて経験したジョブの理解度(経験の内容や成果)、その中で見えた学生の特性(強み・弱み)などを利用する。

大河原氏は、「ジョブ型インターンシップを実行するうえで大切なことは、学生目線に立って指導を行い、コミュニケーションをとること。ジョブの内容や魅力を伝え、学生の主体的なキャリア形成を支援していくことが重要だ」と、企業側の対応のポイントを語っていた。