ベネッセコーポレーションは7月19日、同社が法人向けに提供しているオンライン動画学習サービス「Udemy Business」の2023年第1四半期(4月~6月)の検索データおよび受講データをもとに分析した、国内リスキリングに関するトレンドを発表した。
リスキリングの課題は3つの「ない」
今回、「リスキリング」という言葉の認知率は社会人全体で56%と、昨年の23%から大幅に増加したことがわかった。また、「リスキリング」が必要と感じている人は全体の56%だが、実際に取り組んでいる人は全体の10%程度であることも明らかになった。
ベネッセコーポレーション 社会人教育事業本部 本部長(Udemy日本事業責任者)飯田智紀氏は、分析結果について、「リスキリングの認知度は上がっている一方、行動に移している人は少ないという結果が出ている。知っているけど行動できない、このギャップをどう解消するかが課題と言える」と説明した。
こうした結果を受けて、飯田氏は「リスキリングの課題は、時間、やる気、お金の3つがないこと。企業はこの課題にどう向き合うべきか、と言われている」との見解を示した。
リスキリングのギャップを乗り越える3つのポイント
では、こうしたリスキリングにおけるギャップを乗り越えるにはどうしたらよいのだろうか。飯田氏は3つのポイントを紹介した。
1つ目のポイントは、行動変容まで至らないことの解消に向けては、他者からの声を生かすことだ。2つ目のポイントは、「検索データと受講データには差分があること」を前提にキャリア設計を行うことだ。「個人が学びたいことと組織が学んでほしいことの差分を前提にキャリア設計を行うことで、個別最適化を進められる。差分をポジティブにとらえれば、相互理解のきっかけになる」と、飯田氏は説明した。
3つ目のポイントは、「時間・やる気・お金の3つがない」を乗り越える理由を管理者と受講者の双方に用意することだ。そのためには、一歩を踏み出す仕掛けづくりが大切だという。
飯田氏は、企業側でリスキリングを評価・推奨する組織風土を醸成しつつ、個人が自律的にキャリアをひらくスキルを習得することで、誰もが 主体的に学び続けられる文化が育まれていくと語っていた。
検索も受講もChatGPTが急増
ベネッセコーポレーション 社会人教育事業本部 ラーニングデザイン部 分析センター センター長 大塚卓氏からは、業界別のリスキリングのトレンドの紹介が行われた。
今回、個人の学習ニーズを探るために「Udemy Business」の検索結果を、また、企業の受講促進も反映された学習動向を探るために「Udemy Business」の受講結果の分析が行われた。
その結果、すべての業界でChatGPTの検索と受講が増えていることがわかった。それ以外のトピックについては、業種によって傾向が異なる結果が出ている。
例えば、銀行・証券・保険業界では、ITパスポートが検索で最も多かった一方、受講はExcelが最多となっている。また、自動車・輸送用機器業界では、Pythonが検索で最も多かった一方、受講はChatGPTが最多となっている。
こうした検索と受講の傾向について、大塚氏は次のように語った。
「ChatGPTをより活用しようとすると、AIやDXに関連した口座の受講が促進される。また、DXの推進に向けて、人材育成の観点からITパスポートなどの資格の需要が高まっている。あわせて、DXを進める上で求められるプロジェクトマネジメント系の受講も増える傾向がある」