マネーフォワードは7月18日、2023年11月期第2四半期の決算説明会をオンラインで開催し、同社 代表取締役社長 CEOの辻庸介氏が説明に立った。同社はバックオフィスSaaS(Software as a Service)を中心とした「ビジネスドメイン」、決済サービスといった「ファイナンスドメイン」、SaaSマーケティング支援を行う「SaaSマーケティング」Fintech推進・DX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行う「Xドメイン」、家計簿アプリをはじめとした「ホームドメイン」のポートフォリオに持つ。
通期の売上高とSaaS ARRを上方修正
第2四半期の業績を振り返った辻氏は「上期の好調な事業進捗をふまえ、売上高、SaaS ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)ともに通期見通しを上方修正した」と述べた。
全社の第2四半期連結売上高は前年同期比43%増の73億円、SaaS ARRは同42%増の198億6000万円、ビジネスドメインの法人向けARRは同48%増の140億2000万円、売上総利益は同41.8%増の45億6400万円、EBITDA(Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization:利払い前・税引き前・減価償却前利益)は前四半期のマイナス7億円から同6億2000万円に改善し、Fintechサービスの売上は2年間で売上高が3.4倍に成長した。
ビジネスドメインの売上高は前年同期比47%増の44億1000万円、課金顧客数(法人、個人事業主)は同29.5%増の27万6670人、ARPA(Average Revenue Per Account:1アカウントあたりの平均売り上げ)は同11.6%、法人向けARRは前述の通りだが、中堅企業のARRは同66%増の52億7000万円、法人顧客の解約率は3カ月平均で0.9%となった。
インボイス制度や改正電子帳簿保存法への対応を含めたプロダクトの提供価値向上に加え、物価上昇に伴う開発費の増加をふまえて、個人事業主向けの基本料金を2023年12月に改定を予定している。
また、6月には紙証憑の自動記帳サービスの「STREAMED」で会計事務所の記帳代行業務における資料回収とスキャン作業を代行する「スキャンセンター for STREAMED」の提供を開始し、記帳代行業務を効率化。現在、5400事務所で利用されているSTREAMEDの利便性を高めることで、会計事務所での利用をさらに促進するという。
ファイナンスドメインの売上高は前年同期比25%増の3億8700万円となり、請求・決済代行事業(ストック売上)は同36%増の1億3900万円となった。HIRAC FUND2号のセミファイナルクローズを実施し、ファンド総額は61億5000万円。
SaaSマーケティングの売上高は前年同期比37%増の8億9300万円となり、SaaSマーケティングプラットフォーム「BOXIL SaaS」の高成長とともに、オンライン展示会「BOXIL EXPO」の開催で好調な業績となった。
BOXIL SaaS上に投稿された3万件以上の口コミやサービスの比較記事、製品情報などの情報がChat GPTを通じて連携する「ChatGPT プラグイン」の提供を開始し、比較、検討、資料請求までのフローを一気通貫で提供を可能としている。
Xドメインの売上高は前年同期比58%増の6億1300万円、ストック売上は同40%増の2億8900万円。金融機関などの法人向けサービスの導入が進み、提供サービス数は149件まで増加し、うちDX支援サービス「Mikatano」シリーズは63件となった。引き続き、金融機関向けのDXソリューションを強化することでストック売上比率60%を目指す。
Mikatanoシリーズを導入した金融機関向けに「Mikatano Meetup」を初開催しており、各金融機関が事例や取り組みを共有することで、新アイデアや戦略を生み出す機会を醸成している。栃木銀行向けに、個人向け金融商品へのニーズを契約につなげるWebコンテンツ「XIM-Contents」を提供している。
ホームドメインの売上高は前年同期比36%増の9億7900万円となり、第1四半期における金融関連サービス連携の上限数変更や上位プラン「資産形成アドバンスコース」の提供開始でストック売上の成長を継続。
家計簿・資産管理アプリの「マネーフォワード ME」の利用者数は1470万を突破し、課金ユーザー数は49万となり、直近では資産形成アドバンスコースで配当予測機能をアップデートしている。
インボイスやUXの改善で新機能を追加
説明会では成長戦略の進捗状況についても触れられた。まず、インボイス制度対応に向けて、中堅・エンタープライズ企業向けの請求書受領・送付システム「マネーフォワード クラウドインボイス」で「送付機能」の提供を開始。
UX(ユーザー体験)の向上にも取り組んでおり、複数のプロダクトで共通基盤や機能として「マイページ機能」や「共通ワークフロー機能」を提供。「マネーフォワード債務支払」などのインボイス制度対応プロダクトで登録番号の「一括照合機能」や「マネーフォワード クラウド契約」で契約業務の工程をワンストップで管理する「案件管理オプション」などを追加し、幅広いユーザー層への価値提供を可能としている。
そして、同社が注力するSaaS×Fintech領域においても積極的に取り組みを進めている。前述したように過去2年間で売上高が3.4倍に成長し、SaaSに加えてFintechサービスを利用してもらうことで顧客定着率の向上ARPAを実現しているという。
ファクタリングサービスの「マネーフォワードケッサイ・アーリーペイメント」は累計取扱高が2000億円に達している。「マネーフォワードビジネスカード」は継続的な機能拡充を進め、約28万の顧客基盤と会計事務所とのパートナーシップにより、限定的な販促費で発行枚数29万枚を突破し、同カードでは利用明細へ領収書添付やメモ入力が可能な「証憑・メモ添付機能」を追加。さらには、インフォマート社と提携し掛売決済に「マネーフォワード ケッサイ」の与信・保障・督促機能を提供する。
業績見通しは冒頭の辻氏の発言通り、連結売上高は期初時点の274億9000万円~296億4000万円から292億1000万円~302億8000万円、SaaS ARRは211億9000万円~228億2000万円から223億3000万円~231億4000万円に上方修正する。
辻氏は「これまでと変わらず2021年~2024年委かけての売上高成長率30~40%の田一誠を目指すとともに、2024年のEBITDAの黒字化に向けてマージンを改善し、2025年以降も収益性の改善を継続していく」と力を込めていた。