浜松医科大学と国立環境研究所(環境研)の両者は7月14日、エコチル調査の約6万人を対象に、生まれてくる子どもの性別と子どもの兄弟姉妹の性別の関連性について調べた結果、過去に連続して男児のみを妊娠・出産している場合は、連続して女児のみを妊娠・出産している場合よりも、次の妊娠機会で男児を妊娠・出産する確率が高いことがわかったと共同で発表した。
同成果は、浜松医科大 生殖周産期医学講座の宗修平特任講師、環境研 エコチル調査コアセンターの山崎新コアセンター長、同・中山祥祠次長らの研究チームによるもの。詳細は、米オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
環境省が2010年度から開始した「エコチル調査」は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするため、全国の約10万組の親子を対象に実施されている、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査だ。同調査では、臍帯血(さいたいけつ)、血液、尿、母乳、乳歯などの生体試料を採取して保存・分析すると同時に、その追跡調査が行われている。
今回の研究は、エコチル調査で収集されたデータのうち、主に生まれてくる子どもの性別と子どもの兄弟姉妹の性別データを利用して行われた。ヒトの性別は、精子が男性になる性染色体のY染色体を卵子に運ぶか、女性になるX染色体を運ぶかで決定され、卵(X染色体のみ)に受精した瞬間には性別が決まっている。このような受精時の性比を「一次性比」という。今回の研究では、一般的な性比算出方法を採用し、女児の数を1とした場合の男児の割合で示された。ただし、受精しても流産や死産になる場合があり、中絶が選択される場合もある。そのため、実際の出産時の性比は一次性比と区別され、「二次性比」と呼ばれる。
英国の研究者であるロナルド・フィッシャーによって1930年に唱えられた「フィッシャーの原理」によれば、多くの動物の二次性比は1:1で拮抗するとされるが、ヒトではわずかに男児の方が多いことが知られている。その理由として、一次性比が男児に偏っていることが原因であるという報告もあれば、二次性比に影響を与える流産や死産となる女児の割合が男児に比べて多いために、結果として二次性比が男児に傾くという報告もある。
そこで研究チームは今回、エコチル調査に参加した10万4062名の妊娠初期の女性を対象に、過去に妊娠した子どもの性別と、今回妊娠・出産に至った子どもの性別に関連性があるかどうかを調べたという。