国立循環器病研究センター(国循)は7月13日、急性期脳卒中における「サルコペニア」と「摂食嚥下障害」との関連を解明したと発表した。

同成果は、国循 脳神経内科の福間一樹医師、同・猪原匡史部長らの研究チームによるもの。詳細は、欧州臨床栄養・代謝学会の刊行する公式学術誌「Clinical Nutrition」に掲載された。

サルコペニアとは、高齢化などで筋量と筋力の低下が身体活動障害をもたらす症候群のことをいう。また摂食嚥下障害とは、食べ物や飲み物を口の中に入れ、そしゃくし、飲み込むことの障害であり、誤嚥性肺炎を引き起こす原因となる。この両者は、脳卒中後患者を含めた高齢者の予後やQOL(生活の質)の低下に影響しうる重要な問題となっており、近年、サルコペニアによる摂食嚥下障害に注目が集まっている。その中で、回復期リハビリテーションを受ける患者に対するサルコペニアの摂食嚥下予後への影響が報告されるようになったが、脳卒中急性期におけるサルコペニアと摂食嚥下予後との関連はこれまでのところ不明だったという。

そこで今回研究が行われ具体的には、国循 脳卒中ケアユニットにおいて診療体制を整備し、2020年~2022年にかけて入院早期に低栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害のスクリーニングを行った60歳以上の急性期脳卒中患者350例を登録。アジアのサルコペニア診断基準に基づき、健側(麻痺がない側)の握力と下腿周囲長、生体インピーダンス法による骨格筋量指数を計測する判定スキームでサルコペニアが診断された。そして、サルコペニア罹患群とサルコペニアが否定された対照群に分類し、摂食嚥下機能、経口摂取レベル、誤嚥性肺炎の合併を比較したとする。

  • 脳卒中患者のサルコペニア判定スキーム

    脳卒中患者のサルコペニア判定スキーム(出所:国循Webサイト)

結果、登録患者のうち約34%にあたる119例にサルコペニアが認められ、そのおよそ66%が低栄養を伴っていたという。また、サルコペニア罹患群は対照群と比較して、摂食嚥下関連筋の1つである舌筋の筋力(舌圧)が低く、嚥下スクリーニングテスト(改訂水飲みテストスコア)の結果が不良だったとした。さらに、サルコペニアが入院7日後と入院14日後の経口摂取レベル不良、入院中の誤嚥性肺炎合併と有意な関連を示すことが明らかになったとする。

研究チームは、今回の研究で得られた知見に基づいた低栄養・サルコペニア・摂食嚥下障害を包括した脳卒中管理の発展が期待されるとしている。