ベネッセコーポレーションの提供する「進研ゼミ小学講座」は7月13日、小学生向けに安心・安全に配慮し、ベネッセが学習向けに独自にカスタマイズした生成AIサービス「自由研究お助けAI」を7月25日より無償で提供することを発表した。
この発表に先立ち、同社は7月12日に「自由研究お助けAI」の親子体験会およびメディア取材会を開催した。新商品の発表会には、ベネッセコーポレーション 小学生事業本部 本部長の的場一成氏と広島工業大学教授の安藤明伸氏が登壇し、「自由研究お助けAI」の紹介を行った。
本稿では、新商品発表会の一部始終と親子体験会の様子を紹介する。
学習への生成AIの導入で懸念される「思考力養成」はどうなる?
「自由研究お助けAI」は、「これからの未来を生きていく子どもたちに、安心・安全な環境の中で生成AIに早くから触れ、学びに活かしてほしい」という考えの下、小学生向けに安心・安全に配慮し、子ども自身の思考力の向上や興味関心を広げるため、夏休みの自由研究をテーマに、ベネッセが学習向けに独自にカスタマイズしたもの。
同サービスでは、1つの答えを提示するのではなく、さまざまな観点で自由研究のアイデアやテーマをみつけるためのヒントがAIキャラクターとのやり取りの中で提供される。
また、安心・安全に配慮した設計として、利用前の保護者の確認や、有識者監修の保護者・子ども双方への情報リテラシー学習の導入、目的外の利用や1日の質問回数を10回までとする制限などを設けるなどの仕組みを敷いている。
特に目的外の利用に関しては、「読書感想文の代筆」や公序良俗に反する質問といった内容の文章には回答しない設計がなされているという。
「生成AIは産業全体を変革する可能性を秘めている一方で、低学齢における『教育の活用』については慎重に議論されています。思考力養成などへの懸念が大きく、生成AIの活用に否定的な小学生保護者へのアンケートで『自分で考えなくなりそうだから』と回答した方は51%に上りました。加えて、意図しない著作権侵害や情報の正誤判断の難しさなどを否定的な意見として挙げる方も多いです。ベネッセとしては、お子さまの思考力の向上や興味関心を広げるために生成AIを活用してほしいという想いがあり、今回の開発に至りました」(的場氏)
生成AIを利用する際に大切な「使い方5か条」
的場氏は「自由研究お助けAI」の特徴として、「答えを教えるのではなく、考える力を養うAIキャラクターによるナビゲーション」「小学生の利用に配慮した安心・安全な設計」「生成AIの使い方、ルールといった、情報リテラシーを学ぶための動画解説」といった3つの要素を挙げた。
特に3つ目の要素である「生成AIの使い方、ルールといった、情報リテラシーを学ぶための動画解説」に関しては、有識者が監修しており、生成AIを活用する上で大切な「使い方5か条」を学ぶことができる。
それが以下の5か条だ。
・必ずお子さまと保護者の方で一緒に使いましょう
・自分の頭で考えてもらう
・AIの回答内容が正しいか一緒に調べる
・個人情報は入力しない
・AIがつくったものはそのまま丸ごと使わない
「使い方5か条を確認したら、最後にチェックボックスを用意しています。ここに改めてチェックを入れて、内容を再確認することで安全に生成AIを利用することが可能になります。ベネッセとして推奨する活用方法は、『テーマ決め』と『観点・進め方アドバイス』の2つです。生成AIを通してさまざまな観点で自由研究を考えるためのヒントが提供され、『自分で考える力』を伸ばすことが可能になります」(的場氏)
実際に活用した参加者の声「少ない回答制限の中で質問する難しさ」
また次に登壇した、サービスの監修を担当した専門家である安藤氏も、サービスの発表に先立ち以下のようなコメントを寄せた。
「私たちは『情報リテラシーが求められる世界』を生きています。どれだけ性能の良いITツールやAIが開発されても、使い手の使い方によって効果は変わってきてしまいます。どのように活用すれば、最大限の効力を発揮するのかを考えるべく、自分の考えるという行為について改めて考えることが大切です。そして、忘れてはいけないのは『テクノロジーは完璧ではない』ということです。テクノロジーは、人の使い方と共に発展していくのです」(安藤氏)
そして、発表会終了後には進研ゼミ小学講座の会員である4組の親子が参加した親子体験会が行われた。
親子で真剣にパソコンに向かい、時々対話を交えつつ、質問を進めていた姿が印象的だった。ベネッセの考える「使い方5か条」に則って、生成AIは活用が進められているのではないだろうか。
最後に親子体験会に参加した中から、「歌い手について」というテーマで自由研究を考えた柴山琴花さんに感想を伺った。
「初めて生成AIに触りましたが、うまく使えたと思います。元々自由研究をやってみたいと思うテーマは決まっていたので、どんな内容で進めるべきかを生成AIに聞いてみました。すぐに質問の回数制限の10回を使い切ってしまったので、よく質問を考えて聞くのが難しいと思いました」