台湾メディアも日本発情報として伝えるTSMC第2工場の工期
日本の一部メディアが7月11日付で情報源不明ながら、TSMCの熊本第2工場について、第1工場と同程度の規模で、近接地に2024年4月に着工、2025年秋の建屋完成、2026年末までに主に12nmプロセスでの生産開始を目指すと報じている。
台湾メディアも同日から12日朝にかけて、この話題を取り上げているが日本メディアからの引用的なものばかりで、それに続く新たな情報もなく、TSMCや台湾の業界関係者からの裏付け報道も出ていない。
現在、TSMCは7月20日開催予定の第2四半期決算説明会直前の沈黙期間にあり、自らこうした情報を流すことは考えづらいことから、おそらくTSMCの誘致に関わる日本側の関係者からのリークとみられる。
日本での第2工場建設は政府補助金次第
日本での第2工場建設について、TSMCのMark Liu会長は6月の株主総会にて、「日本政府はTSMCが引き続き日本への投資を拡大することを期待しているが、まだ日本第2工場はその評価を行っている段階である」とし、第2工場も第1工場同様のプロセスとなるとの想定を述べていた。また、同社の魏哲家(C.C. Wei)社長兼CEOも2022年第4四半期決算説明会の席にて、日本での第2工場建設の条件として日本政府の補助金が理にかなっていることを挙げており、こうしたTSMC側の態度に対し、日本の西村経済産業大臣は「支援内容や金額を精査したうえで、必要な予算をしっかり確保できるように取り組みたい」と述べており、補助金支給の意向を示している。
また、日本におけるTSMCの大口顧客であるソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長は6月23日、「ソニーのイメージセンサ生産は現在、40nmがメインだが、(TSMC熊本第1工場稼働とともに)今後は22nmが増え、いずれ新たに12nmプロセスへと移っていくことになる。その世代でもメインパートナーはTSMCである。2027年や2028年になると、(ソニー側の増産によりTSMC熊本第1工場だけではロジックの調達が間に合わず)TSMCの台湾工場からも、22nmや12nmプロセスの生産能力をどれだけ調達できるのかという点が課題になるが、日本の第2工場から調達できれば、台湾工場のキャパシティの取り合いが不要になる」と述べており、TSMCの日本第2工場が22nmや12nmプロセスに対応することを示唆しており、今回の報道内容とも矛盾しない話となっている。
7~3nmは第3工場で生産か?
日本では今後、TSMC熊本第1/第2工場が28~12nmプロセス、Rapisusが2nm以降を担うことになるが、その間を埋める7~3nmプロセス対応工場がないため、経済産業省は、そこを埋めるTSM日本第3工場の誘致交渉を進めていると見られている。6月末に来日会見を行ったTSMCのビジネス開発担当シニア・バイス・プレジデントであるKevin Zhang氏も、日本での先端半導体製造の可能性について肯定も否定もしていなかった。
なお、2nm以降を狙うRapidusのパートナーである日本IBMの森本典繁副社長がBloombergの取材に対し、RapidusがIBMの半導体パートナーであるSamsungとも協業する可能性について、「目的とビジネスニーズが合えば、当然いろいろなオプションは検討する」と述べており、昨今の日韓関係の改善もあり、今後の日本の先端半導体製造にはさまざまな選択肢が出てきそうである。