蒸し暑い日が続く季節を迎え、厚生労働省は職場での熱中症対策を分かりやすく解説した「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」を作成した。炎天下の屋外だけでなく、屋内の職場でも発生する危ない状況と対策などをイラスト中心で表記しているのが特徴で、ウェブサイトで公表している。同省はこのガイドをダウンロードして印刷するなどして職場で活用してほしいとしている。
同ガイドは全て印刷すると94ページ。「熱中症から命を守る」「危ない状況と対策」「予防法」「熱中症の基礎知識」など7つの章ごとに詳しく、丁寧に伝える構成になっている。厚労省の担当者によると、働く人の中でも特に現場作業する人や、中小企業の安全・衛生管理者に参考にしてほしいという。
ガイドの記載によると、2013~22年の10年間に職場で熱中症になった人は建設業が最多で1571人。次いで製造業の1311人、運送業の940人で以下商業、警備業と続く。死者は建設業92人、製造業31人、警備業26人の順で多かった。
症状と重症度については、最も重いⅢ度(熱射病)は意識がない、けいれん発作、身体が熱いといった症状があるとし、Ⅱ度(熱疲労)は、口の渇きやめまい、頭痛、倦怠感などが特徴。顔面蒼白(そうはく)や脱水、吐き気、めまい、立ちくらみや急性筋肉痛、こむら返りの症状が出たらⅠ度(熱失神・熱けいれん)だという。
いずれの場合も手当が必要。Ⅲ度は入院治療が、Ⅱ度は医療機関での診療がそれぞれ必要で、Ⅰ度でも119番した上で、冷所で安静を保ち、身体を冷やすなどの応急措置が必要としている。例えば作業員の顔面蒼白など、様子がおかしい場合はすぐに119番し、救急車が到着するまで作業着を脱がせ、水をかけて全身を速やかに冷やすことを勧めている。
危ない状況としては、直射日光が当たる、照り返しが強い、風通しが悪い、重量物を運ぶ作業などを指摘。対策として例えば、宅配業者や引っ越し業者は日陰を探してこまめに休憩をすること、ビルメンテナンスの作業員は通気性の良い作業帽をかぶり、単独作業を避けることを推奨している。
大切な予防法としては、仕事をする前日夕方に熱中症警戒アラートが出た場合はこれを確認して前夜は睡眠を十分とり、飲酒は控えめにすることなどを挙げ、当日は仕事前の体調や食事の有無、仕事中の水分・塩分補給など、チェックする項目を例示している。この中で塩や砂糖、レモンを使って自分で作れる「熱中症予防ドリンク」の作り方も紹介している。
ガイドはまた、暑さに慣れる「暑熱順化」が大切で、順化するまでは十分休憩をとり、2週間ほどかけて徐々に身体を慣らすことを勧めている。順化が進むと早く汗が出るようになり、体温の上昇を食い止められるという。
実際に現場でできる取り組みとして、涼しい車を休憩所として使うことや、足を水に入れて冷やす「足水専用簡易ハウス」の設置なども記載。危険な状態の簡単な調べ方として手の甲の皮膚をつまみ上げる方法を示し、元に戻るのに2秒以上かかれば脱水の疑いがあると指摘している。
厚労省は建設会社の安全・衛生担当者や産業保健管理学の専門家ら10人の委員で構成される「職場における熱中症予防対策マニュアル等作成業務」検討委員会を設置し、このガイドを作成した。
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