RevComm(レブコム)は7月7日、対面のコミュニケーションを録音し、AI文字起こし・解析する新サービス「MiiTel RecPod(α版)」を発表した。同日には記者発表会が開かれ、音声コミュニケーションのビッグデータ化と、「経営判断支援AI」の開発を目指す同社の中期経営戦略が説明された。
電話、オンライン、対面の音声を集約しビッグデータ化
同社は、音声自動解析エンジンを活用した電話サービス「MiiTel」と、同AIを搭載したオンライン会議解析ツール「MiiTel Meetings」を提供している。今後はMiiTel RecPodの製品版のリリース経て、音声コミュニケーションのビッグデータ化を目指す計画だ。
ビッグデータは同社製品と連携するデータ分析基盤「MiiTel Analytics」で分析できるようにして、営業戦略やマーケティング施策の策定、プロダクト開発などに役立つインサイトが得られるサービスとして企業に提供していくという。
RevComm 代表取締役の會田武史氏は、「音声コミュニケーションはブラックボックス化しやすい。顧客との商談や会議においては、当事者以外は何をどのように話されたか正確に把握できず、上司が後から報告を受けたとしてもその時の会話のニュアンスまでは伝わらない。音声データを可視化し、AIで分析することで、営業活動での成約・失注した理由やコールセンター業務におけるパフォーマンスなどをより正確に把握できると考える。また、分析内容を従業員のトレーニングに活用することで、教育コストを削減できる」と述べた。
さまざまな事業活動に生成AIが活用されることが予想される中で、「生成AIが活用できる音声データを企業内に蓄積しておくことが重要」と會田氏は考えており、そのためにビッグデータ化に着手するそうだ。
製品面では電話、オンライン、対面と全ての会話データを集約し、分析のためのプラットフォーム化を進める。説明会では、音声にまつわるデータを幅広く収集するための機能として、他社システムとの連携ツール「Incoming Webhook」を提供開始することも発表された。同ツールで、AvayaやCiscoなどが提供する電話サービスの音声データを分析することが可能だという。
同社は今後、自動アポ取りAIなどの機能拡張を行いつつ、2027年までに同社製品のユーザーを約10倍に増やす目標を立てる。そして、扱うデータ量を拡大させていき、同年に経営判断を支援するAIの提供を目指す。
「経営戦略などの議論がなされているのは普段のミーティングやディスカッションであり、それらの積み重ねが最終的な経営判断となる。普段の議論を解析・可視化して、顧客のビッグデータとしてアセット化。それらをAIで分析して経営判断をサポートできるようなPaaS(Platform as a Service)を提供する」と會田氏は今後の事業展開を語った。
コミュニケーションの改善を促す生成AIを研究・開発
RevCommは2023年1月に、AIを用いたコミュニケーションの分析・研究を行う専門の開発組織「RevComm Research」の設立を発表した。
同研究所では、「議事録の作成」「資料や原稿の作成」「分析・評価」「教育・コーチング」の4つの観点で生成AIを活用する方針だ。
定量・定性情報を分析し問題点を洗い出す生成AIや、発話や発言内容を基に問題点を指摘し、人のコミュニケーションの改善を促す生成AIの研究・開発するという。
RevComm 執行役員 リサーチディレクターの橋本泰一氏は、「画像や映像、文章など人間の創作活動を再現できることから、生成AIはクリエイティブ関連の職業に大きな影響を与えると考えられている。しかし、マッキンゼーの調査によれば、営業、マーケティング、ソフトウェアエンジニア、カスタマーオペレーション、プロダクト開発など、明瞭で効率的な情報伝達を多く行う職業に生成AIを活用することで経済的効果が生まれやすいという。当社でもそのように考えており、コミュニケーション活性化や業務効率化のために生成AI研究を続ける」と説明した。
また、経営判断を支援するAIについては、企業のIR情報や株価、世界情勢など外部の客観的な情報を活用。音声、テキスト、画像データの入力が可能なマルチモーダルAIとして開発を進めるという。