Zoomの日本法人であるZVC JAPANは7月6日、新製品発表会を開催した。同社は、オムニチャネル・コンタクトセンター・アズ・ア・サービス(CCaaS)体験を提供する「Zoom Contact Center」の国内提供を開始し、会話型AIとチャットボットを融合した「Zoom Virtual Agent」の日本語版の提供も順次開始する
発表会には、Zoom Video Communications, APJカスタマーエクスペリエンス部門責任者のフィリップ・ザミット氏、Zoom Video Communications, Zoom Contact Centerセールス・GTM責任者のスコット・ブラウン氏、ZVC JAPAN代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏が登壇し、ソリューションの説明を行った。
本稿では、その一部始終を紹介する。
Zoomが行うAIに関する取り組みは「AI基盤で幸福度を上げる」
Zoomは現在、AIを基盤にした単一のプラットフォームで「幸福度」を向上することを目指し、「Federated(連合する)」「Empowering(エンパワーメント)」「Responsible(責任感)」という3つの取り組みを行っている。
「Federated」では、企業固有の専門用語やシナリオに合わせたモデルのカスタマイズを行い、「Empowering」では、AIを利用した生産性の向上やチームワークの強化を行い、「Responsible」では、プライバシー、セキュリティ、安全性を意識した AIの利用を行っている。
そんなAIへの取り組みに注力するZoomだが、「ハイブリッドワークの生産性向上」「人と人のつながりを強化」「満足度の高い顧客体験」といったキーワードをもとに、サービスの展開を行っているという。
「Zoom Contact Center」と「Zoom Virtual Agent」の特徴
「Zoom Contact Center」は、Zoomのコラボレーション・プラットフォームの一翼を担うソリューションで、オムニチャネル・コンタクトセンター・アズ・ア・サービス(CCaaS)体験を提供する。
このサービスにより、企業はビデオや音声、チャット、電話を含むといったさまざまなチャネルで、顧客に迅速かつパーソナライズされた応答を提供することができ、特にビデオを活用したルーティングに最適化されているという。
もう一方の「Virtual Agent」は、複数のカスタマー サポートチャネルで 24 時間体制で稼働し、パーソナライズされたカスタマー エクスペリエンスを提供する。これにより、コールセンターへの問い合わせを軽減し、人的サポートを必要とする顧客に対してより質の高い時間を提供することを実現する。
Zoom Contact Centerのアドオンとして使えるほか、単体の会話型AIソリューションとしても提供される。
「本日付で提供開始された『Zoom Contact Center』の最大のコンセプトは、『顧客体験(CX)と従業員体験(EX)トータルな体験を提供』することにあります。デジタルイニシアチブを追求する主要な理由として、顧客体験の向上と従業員の生産性の向上が挙げられているほど、このCXとEXは非常に重要なキーワードとなっています」(下垣氏)
Zoom Contact Centerの特徴としては、以下の4つがある。
・直感的な操作性
Zoom Contact Centerのエージェントとスーパーバイザーは、ユニファイドコミュニケーション(Zoom Meetings、Zoom Phone、Zoom Team Chatなど)であるZoomプラットフォームの一部として、コールハンドリングすることが可能。また、すでに導入されているZoomアプリを使用するため、ITも簡素化できる。
・拡張性
ZCCは、基本的に無限のアプリケーションスケールが提供可能であり、Zoomは、SMBからエンタープライズまで幅広い層の顧客に対して、先進的なCCaaS機能の提供を支援する。Zoom Contact Centerはクラウドで生まれ、規模に合わせて構築されているため、顧客は利用したエージェントサポートについてのみ課金される。
・柔軟性
Zoom Contact Centerは、顧客と組織の間のビデオ接続を簡単にする一方で、ビデオ、音声、チャットなどの複数チャネルでオムニチャネルのコンタクトセンター機能をネイティブにサポートする。
・革新性
エンドユーザーは、Webやアプリ、電話など任意のデジタルプレゼンスからエージェントとの会話を開始し、必要に応じてビデオを簡単に追加することができる。これにより、他のチャネルでフォローアップを提供しながら、ビデオ通話でしか提供できない利便性を活用し顧客に情報を共有が可能。
Zoom Virtual Agentは、「顧客の問題の48%以上を即座に解決」「コンテキストを持ったスムーズなエージェントの引継ぎにより、対応時間を短縮し、顧客満足度を向上」「顧客体験を向上させるための実行可能な洞察を提供」「迅速な収益化のためのノーコード/ローコードの導入と低いメンテナンス負荷を実現」といった特徴を備えているという。
優れた顧客体験の6つの要素と3つの柱
続いて登壇したザミット氏は、同社が重視している「顧客体験」の重要性について、以下のように語った。
「みなさんは不快な顧客体験に出会った時、どのような気持ちになるでしょうか?もちろん良い気分はしないでしょうが、調査によると、不快な顧客体験によって『60%の顧客を失う可能性がある』という結果も出ており、73%のビジネスリーダーは『顧客に信頼ある顧客体験を提供することは業績にとって重要』と回答しています。しかし、一方で『自身の顧客体験が向上した』と回答した人は33%にとどまっているという調査結果もあります。消費者、競合企業、市場が変化する中で、どのように顧客体験を向上するべきなのでしょうか」(ザミット氏)
ザミット氏は、優れた顧客体験を実現するために重要な要素として、「誠実性」「親密性」「パーソナライズ」「利便性」「期待の充足」「問題解決力」の6つを挙げた。
その中でも「3つの柱」として紹介されたのは、個人に最適化された気配りや対応により、感情的なつながりを深めることを指す「パーソナライズ」、顧客の労力(時間や手間)や認知負荷(思考を強いる)を最小化し、ストレスや不安を軽減することを指す「利便性」、顧客に親身に寄り添い、共感を示すことで、感情的に親密な関係を構築することを指す「親密性」だ。