Samsung Electronicsが計画している韓国・龍仁市での半導体クラスターの前倒しの完成に向け、早ければ2026年末にも着工する見通しであると複数の韓国メディアが報じている。
それによると、Samsung Electronics、韓国国土交通部、京畿道地方政府、竜仁市、韓国都市住宅公社の5者が6月27日、Samsungの器興キャンパスに集まり、竜仁半導体クラスターの造成に向けた業務提携式を開催したという。これによりSamsungにとって、器興(キフン)、華城(ファソン)、平澤(ピョンテク)に次ぐ同国内4カ所目となる半導体製造拠点は、当初予定より約3年ほど前倒して着工され、完成すれば世界最大級のファウンドリ拠点となるとされる。
龍仁半導体クラスターは、敷地面積710万平方メートルほどで、当初の計画では2042年の完成を目指し、ファウンドリを中心とする半導体ファブ5棟が建設される予定で、総事業費は約300兆ウォン(約33兆円)が見込まれている。最終的には、韓国内および海外の装置・部品・素材メーカーを150社ほど工業団地内に集め、巨大な半導体クラスターを形成するとしている。
計画当初は、2029年ごろに最初のファブの建設に着手する予定であったが、今回の提携により通常1年ほどかかる予備妥当性審査などの事前作業が短縮され、その結果、2026年末の着工を目指すことで合意したという。当初、すべての土地の造成に7年かかる予定だったが、これが5年に短縮されることも決まったとのことで、早ければ2030年にも最初のファブが稼働する予定である。
Samsungでは、最初のファブ稼働を見込む2030年に0.4GW、ファブ5棟の生産ラインすべてが稼働した場合には7GW以上の電力が必要とするほか、用水は2030年末で3万トン、すべてのファブ稼働時には65万トンが必要と見込んでいる。かつてSamsungは、平澤の半導体工場建設時に送電網の設置を巡って地域住民と対立し、建設工事が遅れた苦い経験がある。そのため、竜仁半導体クラスターの造成で、同じ轍を踏まないようにするために、韓国通商産業資源部と韓国環境部と協力して電力・用水の供給方法を協議するとともに、京畿道と竜仁市が周辺自治体や地元住民との協力の模索を行っていくことにしているという。
なお、Samsungが半導体クラスターの建設計画を前倒しする背景には、ファウンドリビジネス分野でトップを独走するTSMCとの差が広がりつつあることに加え、メモリ分野でも、キオクシアとWestern Digitalの合併が噂されており、それが実現するとNAND分野の首位の座を奪われかねないといった危機感を同社や韓国政府が抱いているためだと韓国業界関係者の間では噂されている。Samsungは数年前に、メモリのみならず非メモリ分野(システム半導体およびファウンドリ)でも2030年までに世界トップを狙うと宣言しており、こうした巨額投資を積極的に仕掛けていくことで競争力の維持・拡大を図る意図がある模様である。