新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は6月30日、「スマートセルプロジェクトなどの開発成果として、旭化成ファーマが医薬品原料の高効率な生産に成功した」と発表した。
旭化成ファーマは、産業技術総合研究所(産総研)との共同開発によって「人間の血中コレステロール濃度を測定する体外診断薬医療品の原料であるコレステロールエステラーゼ(製品名:CEN II)を、自然株に対して30倍以上も分泌させる“スマートセル”と呼ぶ高性能な細胞を開発し、これを利用した“スマートセル構築”の工業化に成功した」と説明している。
NEDOの材料・ナノテクノロジー部バイオエコノミー推進室は「“スマートセル”によるコレステロールエステラーゼの生産は従来よりも低コストで生産性効率が高い上に、生産時のCO2排出量も従来比で96%削減という効果も得られた」と説明する。「脱CO2の達成にも、“スマートセル”実用化は効果を上げそうだ」と“副次効果”を高く評価する。
旭化成ファーマは、静岡県伊豆の国市にある自社工場にて、この“スマートセル”利用によるコレステロールエステラーゼ生産を行い、国内・国外の医療品メーカーに体外診断薬医療品の原料として販売するとしており、「生産性が高いことから、原料としてのコスト競争力がある」という。今後は、この“スマートセル”技術をさらに改良する模様だ。
今回の“スマートセル”の開発事業は、NEDOが2016年度から2021年度まで実施した「スマートセルプロジェクト 植物などの生物を用いた高機能品生産技術の開発」(図1)の中で、特に2019年度から2020年度に旭化成ファーマと産総研が助成事業として実施した「組替えBurkholderia stabilis由来コレステロールエステラーゼ開発」が、直接的な開発成果の基盤になっているようだ。
このコレステロールエステラーゼは「世界各国での健康意識の高まりによって、脂質異常症の検査、特に体外診断用医薬品のニーズが高まっている現在、その原料供給事業が拡大する見通しが高い」と、旭化成ファーマは解説する。
なお、NEDOのバイオエコノミー推進室は「スマートセルを利用する事業を加速させるために、NEDOではバイオものづくりプロジェクト(カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発)を、2020年度から2026年度まで実施している」としている。