アストロスケールは6月30日、2023年5月に移転した新本社を報道陣に公開。併せて、7月5日より、スペースデブリ問題や宇宙の持続可能性の最先端を学べる一般見学施設「オービタリウム(Orbitarium)」をオープンすることを明らかにした。
新本社は東京・錦糸町にあるヒューリック錦糸町コラボツリーの1~3Fを使用しており、1階は広さ832m2で開発エリアとして活用、2階が広さ708m2で、見学施設(オービタリウム)、ミッション管制室、会議室として活用、3階が広さ1387m2でオフィスエリアとなっている。
今回の新本社移転について同社 創業者兼CEOの岡田光信氏は、「3年前の取締役会にて移転の提案を行ったが、実は2回否決された。当時、なぜそこまで大きなオフィスが必要なのか、ということでの否決であったが、将来を見据え、必要だと説得。日本中で、新たなオフィスにふさわしい場所を探した」と振り返り、「さまざまな適した土地を探したが、なかなか貸してくれるところが見つからなかった。そうした中、墨田区はもともと製造業の町で、町工場が多く、受け入れてくれる土壌があった。もともとのアストロスケールの本社も錦糸町にあり、社員も通勤になれていたこともあり、墨田区の協力を得て、今の場所を確保することができた」とさまざまな検討の結果、新たなオフィスも墨田区に設置することに至ったと説明した。
衛星製造用のクリーンルームも見学できるオービタリウム
新本社の目玉とも言えるオービタリウム。名称を社内公募したところ、30~40件ほどの候補が応募され、その中から選ばれたという。オービタリウムという名称を応募したのは、同社の上級副社長を務める伊藤美樹氏で、軌道を意味する「Orbit」と、ラテン語を語源として「~に関する場所」という意味を持つ「~arium」を組み合わせた造語で、伊藤氏は「デブリ除去やスペースデブリという言葉が知られるようになってきたが、アストロスケールの目指しているのはデブリ除去だけではない。必要不可欠なのは軌道を守ること。衛星が地球の周辺を周回するための軌道は有限な資源で、そこをゴミだらけにしないことが重要。それこそが、地上の社会活動の持続可能性にもつながる」と、その名前に込めた意味を説明。軌道をどうやって守っていくかについて多くの人が知ることができる軌道にフォーカスした見学施設であるとする。
オービタリウムの構成は、エントランスを通ると人間大の地球を中心とした円をモチーフとしたデザインを採用した円形シアターが待ち構えている。ここでは約4分間のデブリを放置すると地上がどうなっていくかといったイメージ動画が流されているほか、アストロスケールのロゴが入ったグッズなども購入可能なスペースとなっており、伊藤氏によると「軌道や環境の保全というものは一過性のものではなく続けていくものであり、円にはそうしたイメージを込めている。また、デブリは国を超えた問題であり、広がり、という意味も持たせた」といった思いをデザインに込めたという。
その円形シアターからは2方向に通路が伸びており、片方は会議室エリアとなっており、宇宙船をイメージした通路に5つの会議室が設けられている。それぞれの会議室の名称は「LEO(低軌道)」、「MEO(中軌道)」、「GTO(静止トランスファー軌道)」、「GEO(静止軌道)」、「HEO(高軌道)」と衛星の軌道が採用されている(このほか、主な軌道としては太陽同期軌道:SSOなどがある)。ちなみに、この会議室エリアは、一般見学の際は進入禁止エリアとなるという。
もう片方は1階のクリーンルームを見学することができる展示エリアとなっており、同社のサービスの紹介や軌道の説明パネルが設置されているほか、エアー抽選器のようなビニール球形の中でデブリを模したスチロール製の球体が飛び交っている中、指定されたデブリを捕まえるといったアミューズメントも用意されている。
なお、オービタリウムの見学は予約制となっており、2023年6月30日時点で、2023年7月分の来場予約を受け付けており、1回で最大20名まで参加可能(ガイド付き)。営業日時は毎週水曜日および金曜日の11:00~12:00、15:00~16:00。入館料金は8月末までは無料としており、その後についてはそれまでの状況などを踏まえて検討していくとしている。クリーンルームは8月以降に稼働開始予定だが、製造や試験の状況によっては開発の様子を見ることができない場合があることに注意が必要となっている。
また、同社ではオービタリウムを活用してほかの企業とも協力してコンテンツを増やして行くことも検討しているとするほか、コンテンツの更新なども行っていきたいとしている。さらに、夏休みなど、子供が見る機会が増える時期についてはワークショップなどの開催も検討していきたいともしている。