電通は6月30日、従来は短期的な効果測定が主だったデジタル広告の中長期効果をリアルタイムで評価できるという新指標である「ナーチャリングスコア」を開発し、提供開始した。同指標では、同社が構築した予測モデルによって、デジタル広告の事業成果に対する貢献度を短期的な効果に加えて中長期で評価し、デジタル広告予算を中心としたコミュニケーションの最適化が可能になるという。

  • ナーチャリングスコアの算出方法

同社は、データクリーンルームの大規模な顧客基盤に基づく広告接触履歴や興味関心の属性などから、申し込みや購入に至る確率を推定する予測モデルを機械学習(ML)によって構築した。このモデルによって計算した新規ユーザーの申し込み確率が同指標であり、広告の中長期効果を示すとのこと。

2016年からデータクリーンルームを利用し蓄積してきた知見をベースに、2022年に同スコアの研究開発を開始し、今回、複数のデータクリーンルームで実用レベルのモデルの作成に成功した。

予測モデルは過去のデータに基づいて計算したものだが、これを現在のデータに適用することで、これまでは測定しづらかった将来の申し込み確率を現時点で推測可能になる。

例えば、過去半年間のデータに基づいて学習したモデルを作成し、今日広告を配信したユーザーのスコアをモデルに基づいて計算することで、向こう半年の申し込み確率をリアルタイムに評価し、広告の予算配分や入札調整といった日々の運用の意思決定に利用可能とのこと。

実証実験では、交差検証の結果、予測モデルが70%以上の高い精度を示したという。また、金融系業種での検証では、サイト来訪済のユーザーに対するリターゲティング施策に比べて、潜在層向けの動画施策の方が中長期効果(ナーチャリングスコア)で見ると効率が良いという評価の逆転現象も起きているといい、中長期的な事業成長のためには、動画広告への適切な予算の配分が重要という示唆でもあると同社は考えている。

なお同指標は、同社が提供するデータクリーンルーム活用ソリューション(TOBIRAS Insight / TOBIRAS Activation / TOBIRAS Measurement / TOBIRAS Optimization)のうち、測定・評価に関するカテゴリである「TOBIRAS Measurement」のプロダクトの1つといい、システム基盤である「TOBIRAS」との連携によりスピーディな運用を実現するとしている。