使用済みの天ぷら油から、生物系油脂を原料とする国際規格に適合したバイオジェット燃料を国内で初めて開発したと、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが発表した。食用油の再利用や、航空分野の温室効果ガス排出削減につながる成果という。
ジェット燃料分野では二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減が求められ、化石由来ではない「SAF(サフ、Sustainable Aviation Fuel=持続可能な航空燃料)」の開発が進む。国際民間航空機関(ICAO)は昨秋、国際線で排出されるCO2を2050年に実質ゼロとする目標を決めており、SAFの普及が鍵となる。SAFは植物などのバイオマス原料や、天ぷらや揚げ物に使われた廃食用油などが原料。国際規格「ASTM D7566」は原料や製法により7つに分類されている。このうち、廃食用油など生物系油脂の原料に水素を加える方法に関するものが「Annex2(アネックスツー)」と呼ばれる。
世界的にSAFの採用が進む中、安定調達に向け国産化が求められる。ただ、結晶化する温度が零下40度以下、有害な芳香族炭化水素濃度が0.5%以下といった、厳しい基準を満たす必要がある。こうした中、NEDOは「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」により、2018年度から環境エネルギー株式会社(広島県福山市)、北九州市立大学、一般社団法人HiBD(ハイビーディー)研究所(北九州市)と、使用済みの天ぷら油を活用したバイオジェット燃料の開発を進めた。
課題となったのは、触媒を使い水素を加える処理で油脂の中の酸素原子を除去しつつ、炭化水素の芳香族化を防ぐこと。航空機が飛ぶ上空の氷点下でも凍らないよう、原子の配列を変えて流動性を高める必要もある。
そこで研究グループは新たな触媒を開発し、従来より低圧力、低温で燃料が作れるようにした。工程も改良した結果、芳香族の生成が従来より80%以上少なく、結晶化する温度が零下65度以下、かつ芳香族炭化水素濃度が0.05%未満の燃料ができ、Annex2の全項目を満たすことに成功した。環境エネルギーとHiBD研究所がこの技術「HiJET(ハイジェット)」の特許を取得したという。
研究グループは製造工程の商用化に向け、試験用設備を整備し連続運転を目指す。バイオディーゼル、バイオナフサも商用化させ、温室効果ガスの排出削減に役立てる考えという。
環境エネルギーの野田修嗣社長は会見で「Annex2の燃料の製造に、地球上のさまざまな油が使える。しっかり準備して石油精製会社と一緒に事業をし、さまざまなバイオ燃料を作りたい」とした。成果はNEDOなどが7日に発表した。
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