国立天文台(NAOJ)、鹿児島大学、東京大学(東大)、東北大の4者は6月28日、地球の近傍に位置する、星形成開始から1~10万年程度の初期段階にある19の原始星について、アルマ望遠鏡を用いて高解像度で星の周囲の円盤を観測し、円盤の詳細な構造を系統的に調査した結果、円盤では、星形成の比較的後期段階にある原始惑星系円盤と比べ、惑星系形成の兆候は見られないか、見られても原始惑星系円盤ほど惑星系形成は進んでいないことが推測されたと発表した。
同成果は、台湾中央研究院の大橋永芳氏を中心とする、15の研究機関から37名の研究者が参加した国際研究チームによる大型プログラム「Early Plant Formationin Embedded Disks(eDisk)」によるもの。今回の研究の初期成果は、18編のシリーズ論文として出版予定で、そのうちの概要を解説した論文他5編が米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に受理され、4本がすでに公開済みだ(論文1、論文2、論文3、論文4)。
太陽系をはじめとする惑星系の起源を探ることは、現代天文学における重要なテーマの1つとされている。太陽は今から約46億年前に、およそ1億年の時間をかけて形成されたとされる。太陽程度の質量を持った恒星は、すべて太陽と同様にして形成され、その形成過程において、周囲に円盤が形成され、その中で地球や木星などのような惑星が形成されると考えられている。
円盤は星形成開始後、数100万年が経った頃には消失してしまうため、惑星系形成は星系の形成開始から数100万年ぐらいの間に起こると推測されてきたが、その数100万年の「どの段階」で惑星が形成されるのかは、まだはっきりとはわかっていない。
最近のアルマ望遠鏡を用いた高分解能の観測から、星形成開始から100~1000万年程度経過した若い星周囲の原始惑星系円盤には、同心円状の塵のリングの間にギャップ(間隙)が見られることが観測されており、これは円盤の物質を掃き集めながら惑星が成長しつつある証拠だと考えられている。
その一方で、多くの原始惑星系円盤でそのような兆候が見えることから、原始惑星系円盤では、惑星系形成がすでにかなり進行している、あるいは、ほぼ完了していることも示唆されてきたという。そうしたことを踏まえ、研究チームは今回、星形成開始から1~10万年程度の初期段階にある原始星周囲の円盤に着目し、アルマ望遠鏡で円盤内の塵(惑星の材料)が出す電波の観測を行うeDiskを開始することにしたとする。