東北大学とNECは6月28日、NECと産業技術総合研究所(産総研)が新たに開発した国産8量子ビット量子アニーリングマシンを利用し、将来のコンピュータシステムに関する共同研究を開始したことを発表した。

同研究では、NECと産総研が開発した超伝導パラメトロン素子による8量子ビット量子アニーリングマシンを、インターネットを介して東北大学から利用できるようにする。同マシンは超伝導技術を利用し、ノイズに強く、量子重ね合わせ状態を長く維持したまま多量子ビット化が可能な構成を採用した新開発のマシンとなり、実社会における組み合わせ最適化問題をより高速・高精度に演算することができるという。

東北大学とNECは同研究の中で、同量子アニーリングマシンと東北大学に設置したベクトル型スーパーコンピュータ「SX Aurora TSUBASA」上で動作する疑似量子アニーリング(NEC Vector Annealing)マシンを利用することにより、複雑な社会課題を解くための、コンピューティングシステムアーキテクチャの共同研究を実施する。さらに、高速演算が期待される量子アニーリングならではのユースケース探索も行う。

  • 新開発の8量子ビット量子アニーリングマシンを利用した共同研究のイメージ

    新開発の8量子ビット量子アニーリングマシンを利用した共同研究のイメージ

なお、東北大学とNECによれば、インターネットを介して外部利用可能な国産量子アニーリングマシンは同マシンが国内初で、同マシンを活用した共同研究も今回が初だという。

このほか、同研究では、産総研に設置された量子アニーリングマシンもインターネット経由で利用することで、通信遅延の影響なども加味した上で、2つのマシンを含む全体構成がどうあるべきかを検討。その結果を今後の量子アニーリング、および疑似量子アニーリングの両マシン開発にフィードバックする。さらに、実社会での問題を量子アニーリングならではの速度と精度で解くための、両マシンへの最適な計算の割り当て方を検討する。