日本の経済産業省(経産省)とオランダの経済・気候政策省(Ministry of Economic Affairs and Climate Policy)は6月21日、西村経産大臣およびペーター・ファン・デル・フリート在日オランダ王国大使の立会いの下、半導体分野などにおける協力促進に向けた協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)に署名したことを発表した。

  • 経産省とオランダ経済・気候政策省の半導体などに関する協力覚書調印式の様子

    経産省とオランダ経済・気候政策省の半導体などに関する協力覚書調印式の様子。左から西村経産大臣、門松審議官、アストリット・ブロンスウェイク・イノベーション・知識部門長官、ペーター・ファン・デル・フリート在日オランダ王国大使 (出所:経済産業省)

MOCのポイントは以下の5項目としている。

  • 半導体およびフォトニクスなどの関連技術分野における、企業間の既存の協力を歓迎するとともに、政府・産業界・研究機関による協力を促進する
  • 政策や国際連携の状況について情報共有する
  • その他の関連分野における二国間プログラムの可能性を模索する
  • Rapidusの研究開発プロジェクトの重要性について共有する
  • 日本のLSTC(Leading-edge Semiconductor Technology Center)とオランダのCompetence Centresとの協力を促進する

5つのポイントの中で、Rapidusの社名が挙げられている点が注目される。Rapidusは、2024年末にもASMLから日本初となるEUV露光装置の導入を目指しているが、EUV露光装置の生産台数は限られており、先行して採用済みの大手5社(TSMC、Samsung、SK hynix、Micron、Intel)が奪い合いを繰り広げており、簡単には手に入らない状況となっているため、両国政府レベルで協力関係を構築し、台数を確保する模様である。2nmプロセス以降の微細プロセスでは、次世代の高NA EUV露光装置が必要と言われており、ASMLのスケジュールとしては2023年末に試作機、2025年に量産機を出荷開始予定としているが、こちらも奪い合い状態だという。EUV露光装置1台だけ入手しても、量産には足りず、さらには高NA EUV露光装置も必要になることから、経産省ではRapidusの日本における重要性をオランダ政府に説明し、EUV露光装置の入手に向けた協力を得ようとしていると見られる。