ソニーマーケティングは6月22日~23日にソニー本社(東京都港区)でビジネスソリューションの内見会を開催している。本稿では内見会で展示されていた各種ソリューションを紹介する。
ソニーの国内B2Bビジネス
ソニーグループの国内B2Bビジネス体制はソニーマーケティングのB2Bプロダクツ&ソリューション本部、B2Bソリューション営業本部、カスタマーサービス本部が担っている。
ソニーマーケティング B2Bプロダクツ&ソリューション本部の中川一浩氏は「B2Bビジネスの取り組みはお客さまが起点になる。お客さまに対してグループが持つコア技術、製品を提供することに加え、一層のニーズを満たすためにパートナーとも提供している。これらを併せて、製品+SI+サービスとしてお客さまに付加価値、体験価値を届けることを基本としている」と述べた。
同氏が言う“コア技術”というのは、映像・音響技術を指し、顧客の課題解決および新たな体験価値創造への取り組みを、ソリューションを提供することで支援するものだという。
ソリューションの強化に向けては、映像・音響技術を中心とした「プロダクツ」、空間設計やコンテンツ制作力の強化をはじめとしたUI/UXの「デザイン」、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するSI/サービスの「テクノロジー」と、3つの観点から取り組みを進めている。
ソニーマーケティングのB2Bソリューション事業は大きく分けて放送局を中心にソリューションを提供するメディアソリューション事業と、企業や教育現場を対象としたビジネスソリューション事業の2事業となる。
中川氏は「ビジネスソリューション事業は多様なワークスタイルやライフスタイル変化に合わせて、映像を軸にした新たな体験価値を提案し、ビジネスとして進めている」と説明した。
法人向け「BRAVIA」やαシリーズで培った技術を反映したカメラなどを展示
内見会では、ビジネスソリューション事業の法人向け「BRAVIA(ブラビア)」と高精細大型LEDディスプレイ「Crystal LED」のラージディスプレイソリューション、広報・配信向けカメラソリューション、αリモート制御ソリューション、クラウド映像制作サービスなどのイメージング・プロダクツ・ソリューションをそれぞれ展示している。
ラージディスプレイソリューション
会場に入って、まず目に飛び込むのが7月14日に順次発売予定の法人向けBRAVIAの業務用4Kディスプレイ「BZ50L」「BZ40L」「BZ35L」「BZ30L」の各シリーズだ。同シリーズは会議室やサイネージ、ホテル客室、教育などをターゲットにしている。
BZ50Lは98型と大画面であり、認知特性プロセッサ「XR」を搭載し、最大輝度は1500cd/平方メートル、前モデルから20kg以上の軽量化を実現しているという。
筆者が一番驚いたのはBZ40L(85型、75型、65型、55型)だ。ともすればディスプレイは照明や日光などを反射して映り込みがしやすい。しかし、同シリーズは「ディープブラック・ノングレアコーティング」と呼ばれる独自の技術により、高コントラストで発色のよい映像表示を可能としており、比較コーナーではその差が歴然としていた。
BZ35L(65型、55型)は明るい場所での視認性を確保し、教室での情報伝達に優れているほか、BZ30Lは85型、75型、65型、55型、50型、43型と画面サイズを豊富に展開しており、幅広いシーンでの利用を想定している。
また、法人向けBRAVIAでは「プロモード」「IPコントロール」「B2B専用ブラウザ」の3つの拡張機能を備えている。
プロモードはリモコンを使った簡単な操作で、例えば会議室でディプレイからPCにHDMAIを繋げば電源のオン・オフなどの動作設定やサイネージのイタズラを防止するための設定変更といった機能制限、ホテルの客室テレビに独自の画面でおもてなしを可能とするインテグレーション設定を可能としている。
IPコントロールは、APIを提供しているためシステム連携やアプリへの組み込みを可能とし、外部からネットワーク経由でディスプレイの電源などの制御が可能なことに加え、HTML5アプリ/Androidアプリからも制御ができる。
B2B専用ブラウザは、HTML5アプリで動画や静止画の再生を可能としており、デジタルサイネージで必要なSTB(セットトップボックス)、外付けのプレーヤーが不要。一例として4K動画/静止画の再生表示、テレビ放送や外部入力表示、リモコン、キーからのイベント取得ができる。
Crystal LEDのコーナーでは、4月に発売した新商品の「CHシリーズ」を展示。高画質LEDディスプレイシステムとなり、正確な色再現性や豊かな階調表現、広視野角などによる没入感のある映像で空間演出を実現し、大画面ディスプレイの新しい用途提案をしている。
現行のCシリーズの輝度は750cd/平方メートルだが、CHシリーズは1300cd/平方メートルに高輝度化しているほか、消費電力は20%減、10%の軽量化を実現している。企業のショールームやエントランス向けに提案していくという。
イメージング・プロダクツ・ソリューション
続いては、イメージング・プロダクツ・ソリューションのコーナーだ。ここでは、映像制作用カメラ「Cinema Line」シリーズの「FX3」と、ロボティクス技術を融合させてシネマティックな映像のリモート撮影が可能な「FR7」を紹介する。
FX3は2021年3月に発売し、35mmフルサイズ有効約1026万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサ「Exmor R(エクスモアアール)」を搭載。一眼カメラスタイルのボディ形状で、高さ約77.8mm×幅約129.7mm×奥行約84.5mm、重さ約715gと同シリーズの中でも小型・軽量のモデルだ。
高感度・低ノイズ性能と広ダイナミックレンジ、浅い被写界深度を生かしたぼけ描写を実現。小型・軽量でありつつ、クリエイター向け映像制作用カメラに求められる操作性と信頼性、拡張性を備える。
一方、FR7は昨年11月に発売し、フルサイズセンサ搭載のレンズ交換式旋回型カメラ。シネマのような印象的で高品位な映像表現が可能なことに加え、従来のリモートカメラのようなPTZ(パン・チルト・ズーム)機能により、ユニークな視点や動きによる本格的かつクリエイティブな映像コンテンツ撮影を実現するとしている。
ソニーのEマウントレンズの装着を可能としており、解像力とぼけ味を両立するレンズ「G Master」など、広角12mmから超望遠1200mmの焦点距離までカバーするレンズ群の中から、映像表現に合わせてレンズ選択ができる。
独自のWebアプリケーションとリモートコントローラを活用することで、タブレット端末などからの直観的な操作が可能なことに加え、複数台のタブレットから映像のモニタリングができるため、複数の撮影スタッフが映像を確認しながら制作することも可能。
Webアプリケーションは100以上のプリセットが可能なため、任意の場所を設定すればフォーカスし、微調整はリモートコントローラで行う。実際に触れてみたが、Webアプリケーションからも微調整は可能だが、リモートコントローラの方がより直感的に細かく調整できた。
いずれのモデルもαシリーズと同等の像面位相差AFを搭載し、高速で正確なオートフォーカスを働かせながら撮影を可能とし、人物撮影時は瞳AFで瞳にピントを合わせられるため、撮影者はフレーミングに集中できるという。
内見会を見学した感想としては、中川氏のビジネスソリューション事業に関する説明にあったように“映像を軸にした新たな体験価値”の内実を理解でき、映像技術の凄みに圧倒されたのが正直なところだ。
コロナ禍も収束への道筋が見え始め、ようやく社会も落ち着きを取り戻しつつあり、企業によりさまざまなワークスタイルが求められている。今後、ソニーマケーティングにおけるビジネスソリューション事業の動向が注目されていくだろう。