宇宙飛行士の油井亀美也(ゆい・きみや)さん(53)が来年、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在すると、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発表した。日本人の長期滞在は13回目。2015年以来、自身2度目の飛行となる。航空自衛隊テストパイロット出身の油井さんは会見で「日本人、人類を代表して未来を明るくする役目に指名され、光栄でうれしい」と思いを語った。
JAXAによると、出発は来年後半ごろ。日本人の長期滞在は、今年8月中旬にも出発予定の古川聡さん(59)に続くものとなる。ISSに半年間滞在し、米国などの飛行士と連携してISSを運用し、日本実験棟「きぼう」を利用した科学実験などを行う。地上との往復には米民間宇宙船に搭乗するが、本格運用中のスペースX社「クルードラゴン」、開発中のボーイング社「スターライナー」のいずれになるかは未定という。
日本時間16日、米テキサス州ヒューストンからオンラインの会見に臨んだ油井さんは「1回目の経験を生かし、多くの方に恩返しをしたい。できることは何でもやりたい。日本人を代表し、人類の未来のために働きたい。それを見て日本の方々が日本を好きになって、誇りを持ってくれるのでは」と抱負を述べた。
飛行は9年ぶり。「この間に、民間宇宙船がISSに人を運べるようになったのは、すごい変化。また、米国にいると(月を目指す)探査の歩みを目の当たりにする。個人的にも、数字や機械を相手にするだけでなく、芸術家と知り合うなどして感性を磨くことができた。宇宙開発の大きな流れと、身につけた能力を複合して新しい価値を見いだし、新しい未来を作りたい」と意気込んだ。
米国は国際協力による「アルテミス計画」で月上空の基地の構築や、アポロ以来の有人月面着陸を計画。日本も参加し、2020年代後半に米国人以外で初の着陸を目指している。これについて「もっと早く、高く、遠くへと進んでいくのが人類の本能。それがあればこそ『フロンティアがあるのだ』と気持ちが明るくなり、夢が持てる。月、将来的に火星を目指すことは、人類が落ち込んだイメージを払拭する起爆剤になる。それがないと負のスパイラルに陥る」と持論を語った。
自身の身体の変化にも触れ「最近、老眼が酷くなってきた。目だけは誰にも負けないと思っていたのに、老いを感じる」と明かした。その上で「しかし、渡米して訓練することで気持ちが若返ったし、筋力もつきスタイルも良くなった。頑張ればいろいろなことができる。衰えていることは隠さずに言うので、そこで若い人に『油井さんがこの程度なら、頑張れば抜ける』と思ってもらえればよい」と笑った。
今年2月に飛行士候補となった諏訪理(まこと)さん(46)と米田(よねだ)あゆさん(28)に言及し「新人たちにもお手本となるようにしたい」とした。
油井さんは1970年、長野県生まれ。92年、防衛大学校理工学専攻卒業、航空自衛隊入隊。防衛省航空幕僚監部を経て2009年、JAXAの宇宙飛行士候補者に選抜された。15年、ISSに約5カ月滞在し、物資補給機「こうのとり」5号機をロボットアームで捕捉する作業や、実験装置の設置、多数の実験などを行った。16年から今年3月まで、JAXA宇宙飛行士グループ長を務めた。
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