旭硝子財団(島村琢哉理事長)は、地球環境問題の解決に尽くした研究者らに贈る「ブループラネット賞」の2023年(第32回)の受賞者に、微小なマイクロプラスチックが世界の海を汚染していることを明らかにした英国の研究者3人と大規模災害データベースを創設したベルギーの研究者の計4人を選んだと発表した。表彰式は10月4日に東京都内で開き、受賞者それぞれに賞状、トロフィー、賞金50万ドルが贈られる。
受賞者は、英プリマス大学のリチャード・トンプソン教授(59)、英エクセター大学のタマラ・ギャロウェイ名誉教授(60)、同大学のペネロープ・リンデキュー栄誉教授(51)と、ベルギーのルーバン・カトリック大学のデバラティ・グハ・サピール教授(69)の4人。
旭硝子財団によると、トンプソン氏ら英国の3人の授賞理由は、海洋中に広がる微小なマイクロプラスチックを発見し、深海から高山にまでに広く及ぶ分布を示したこと。また、動物プランクトンを含む海洋生物がマイクロプラスチックを摂取していることを明らかにした。こうした研究でマイクロプラスチックが海洋生物や生態系プロセスに及ぼす影響に関する理解が大きく進展した。世界中での法制定と行動にも影響を与え、深刻化した海洋プラスチック汚染の問題の解決策を講じるよう国際社会に求めた。
この中でもトンプソン氏は、マイクロプラスチックという言葉を海洋汚染の用語として初めて使用。2004年に米科学誌サイエンスに掲載された論文はマイクロプラスチック汚染研究の先駆けとなり、関連研究が世界中に広がるきっかけになった。ギャロウェイ氏はプラスチック中の化学添加物の健康影響やプラスチックが微小に分解される際の影響などを解明。リンデキュー氏は食物連鎖によって多くの生物にも取り込まれることを示した。
トンプソン氏ら3人は「私たちの研究がプラスチックの持続可能な使用を促進する技術革新を支え続け、社会の中でのプラスチックの使用と管理に関する個人や集団の取り組みにも影響することを望んでいる」などとコメントしている。
ベルギーのサピール氏の授賞理由は、気候変動に起因する嵐などの巨大災害、地震などの地球物理学的災害、パンデミックなどの生物学的災害、紛争などの人道的災害を含む世界の大規模災害に関する初めてのデータインフラである災害データベースを創設したこと。同氏の研究成果は、エビデンスに基づいた政策形成に不可欠な科学的データの基礎となった。このデータベースは国連・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のほか、多くの国際機関や各国政府・研究機関などが活用している。
サピール氏は「洪水、熱波、サイクロンなどの気候災害が世界的に急増し、貧しく脆弱(ぜいじゃく)な地域社会ほど壊滅的な影響を受けている。賞をいただき、極端な気候の影響を減少させ、世界中で多くの地域社会が気候変動に適応する支援をするために、より良いエビデンスとデータにしていく仕事を継続することができる」などとコメントしている。
関連記事 |