Arasの日本法人であるアラスジャパンは6月15日および16日の2日間にわたって年次イベント「ACE 2023 Japan」を開催。併せてArasのCEOであるロッキー・マーチン氏が現在の事業概況などについての説明をメディア向けに行った。
現在、同社の2022年のARR(Annual Recurring Revenue:年次経常収益)の成長率は30%以上、サブスクリプションの継続率は95%、全世界で550社以上の企業が活用する状況にあるという。そうした状況の中にあって、日本市場は「多くの顧客がArasのソリューションを活用する重要地域だ」とマーチンCEOは説明する。
そんなArasがビジネスの成長を図っていくうえで重要視しているのは「フォーカス」「オープン」「柔軟性」の3点であり、これらを意識したソリューション開発を推進しているとするほか、AnsysやAVEVAといった自社にない技術やソリューションを有する企業との戦略的パートナーシップを積極的に展開することで、ユーザーエクスペリエンスの向上につながることを強調した。直近の2023年5月には、同社のユーザーでもあるMicrosoftとのパートナーシップを締結。Aras Enterprise SaaSをMicrosoft Azure Marketplaceにて提供開始したことを発表。Azureの顧客がArasのクラウドプラットフォームを活用し、Aras Innovetorの導入と管理を能率的にできるようにしたとする。
Arasの製品開発の方向性
また、Arasプロダクトマネージメント 上級副社長のジョン・スパーリング氏は、Arasの製品開発の投資方向性について、「複雑さの加速」、「自律化の進展」、「ビジネスモデルの変化」という3つの大きなトレンドの変化に沿って進められていることを強調した。また、そうした取り組みの成果は、四半期に1回のソフトウェアリリースに盛り込まれており、同社のソリューションを活用するサブスクライバーは、自分たちのペースでそれらのアップグレードを図ることが可能だともする。
さらに、アラスジャパンの社長 兼 Aras日本リージョンオペレーション担当副社長の久次昌彦氏は、「日本の各ものづくり業界でのArasソリューションの何らかの分野での導入割合をみると、自動車や自動車部品、航空機、半導体などで多くの顧客が採用しているほか、近年は、これまで入り込めていなかった分野でも採用が進んでいる」と、これまでのパートナーシップ戦略が功を奏し、参入市場が拡大し続けていることを強調。AnsysやAVEVAとの協業により、Arasのソリューションの導入実績領域を拡大できるようになるとし、今後も手を取り合って事業成長を目指していきたいとした。
パートナーシップの重要性をパートナー側が強調
ゲストとして登壇したアンシス・ジャパン Area Vice President、カントリーマネージャーの大谷修造氏は「Arasとのパートナーシップはデジタルスレッドの実現にはなくてはならないものである」との考えを披露。その背景には、コンセプト段階から実際の生産に至るまで、シミュレーションの適用範囲が拡大し、製品管理の重要性が増していることがあり、「(AnsysのCAE情報プラットフォームである)『Minerva』がArasのPLMソフトウェア『Aras Innovetor』と同じプラットフォーム上に入っていくことにより、近年、日本でも高まっているSPDM(Simulation Process & Data Management)のニーズにも対応できるようになる」とし、協力して世界に向けたシミュレーション活用を推進していくとした。
もう1人のゲストとして登壇したAVEVAのバイスプレジデント 日本統括の小暮正樹氏は、「AVEVAは電力や化学、造船、EPC(設計、調達、建設)などを対象に、顧客のサステナビリティをソフトウェアの観点から支援する企業。メイン顧客はプラントで、検査結果や図面などのエンジニアリングデータと、OT(Operational Technology)データを活用できるソリューションとして、Aras Innovetorをベースにした新たなアセットライフマネジメント(ALM)を今後リリースしていく。エンジニアリングデータとOTデータをつなぎ合わせることで、保全の高度化やスマート化、現場でのデジタルを活用した点検の省力化といったことが可能になり、止まらないプラントを実現することが可能となる」と、両社のパートナーシップの意義を説明。このパートナーシップによるソリューション強化を踏まえ、「AVEVAのメリットとして、今まで顧客から要望を受けていながらも提供できていなかった価値が提供できるようになる。一方、ArasもAVEVAのプロセス産業のナレッジを活用できるようになりビジネス領域の拡大が可能となる」と、両社に意味があるものであり、この取り組みを加速させていくことで、少なくとも2025年には日本市場だけで10億円の売り上げを目指すとした。
なお、マーチンCEOによると、パートナーシップを模索していく中で、重要視するのはArasとフィロソフィやカルチャーが似ているかどうかという点と、パートナーシップを締結することで、そのパートナーの事業を強化できるのか、Arasにとっても市場や顧客の拡大につながるのか、という点を重視しているという。