PwCコンサルティングは6月13日、国内企業の人的資本に関する取り組みにおける課題と取り組みのポイントをまとめたレポート「国内外600社の人的資本開示から読み解く~人的資本を通じた企業価値の向上に向けて、国内企業は、今何をするべきか~」を公開した。
今回の調査では、「海外に大きく劣る日本の人的資本指標の開示率」「人的資本指標の開示は、事業成長の可能性を伝える手段」「人事施策の紹介が主目的となっている国内企業の人的資本開示」「人的資本に対する取り組みのポイントは、『人事施策と事業成長の関連性の可視化』と『人的資本マネジメントの推進』」を主要な結果として紹介している。
「海外に大きく劣る日本の人的資本指標の開示率」については、人的資本指標の開示状況に関して、先行的に情報開示の枠組み制定が進む欧州・北米に対し、国内企業の開示率が大きく劣っていることを紹介している。
2021年度の日本の開示率はいずれの指標においても最も低く、欧州は日本の約4~6倍、北米は日本の約2~3倍の開示率。8年間(2013年~2021年)の開示率の増加ポイントも、日本が最も低い結果となっている。
「人的資本指標の開示は、事業成長の可能性を伝える手段」に関しては、投資家が人材関連情報に着目する理由は「企業の将来性への期待」であることを述べつつ、多くの投資家は、企業の投資による人材力の向上が、企業の中長期の事業成長につながると考えていると指摘している。国内企業は、法的な要請に応えることに加え、自社の事業成長に対する投資家の期待を獲得することを目的に、人的資本情報の開示を進めることが必要であることを示唆している。
また「人事施策の紹介が主目的となっている国内企業の人的資本開示」の項目では、国内企業の人的資本開示において、自社の中長期的な事業成長や、事業成長を実現するための人的資本マネジメントについて言及しているかを調査するために、国内企業各社の人的資本開示状況を分類したところ、「施策紹介型」が最も多い結果となっていることが紹介されている。
最後の項目では、多くの国内企業の人的資本開示が「施策紹介型」である点を踏まえると、国内企業が人的資本開示において今取り組むべき課題は、人事施策を事業戦略と連動させ、人的資本が事業成長へどのように貢献するかということを、投資家に対してより明確にしていくことであると述べている。また、既に開示している各人事施策が、人材の力を事業成長につなげるための人的資本マネジメントに資する取り組みであるか、改めて検証した上で推進することも重要であるとしている。