公益社団法人日本工学アカデミー(東京都千代田区)は6月6日、都内で「第7回政治家と科学者の対話の会」を開催し、「生成AIをはじめとしたAIの社会実装、利活用に向けた共創」について議論した。この議論では、5G/6G時代のAI利活用戦略マップなどの中身などについての意見交換などが行われた。
この討論会には「5G/6G時代のAI利活用戦略プロジェクト」のプロジェクトリーダーを務めている名古屋大学(名大)大学院情報科学研究科の森健策 教授(図1)、東京工業大学(東工大)情報理工学院の岡崎直観 教授、東京医科歯科大学(TMDU)情報医工学分野の中島義和 教授が、それぞれ講演した。
森教授は、2022年12月以降は米国のベンチャー企業が提供する「ChatGPT」などの生成AIなどを取り上げた新聞記事が急増し、その使い方などの議論が社会面で盛んになっていると語り、「すでに医療分野では画像診断への応用などが検討され始めている」と解説した。実際に、大腸ポリーブの診断として、「患者の大腸内を調べる内視鏡画像の動画では、生成AIを用いた動画像にて大腸ポリープらしい部分で警告音を出し、その可能性が高い部分に印しを付けるという支援ツールとしての有効性を発揮している」と、その実際の動画を交えて説明した。
現在、通信ネットワーク技術は5Gから6Gに切り替わりが進むことが見えてきており、「超高速・大容量通信が実現し始め、AIのためのネットワーク環境が構築され、AI利用の環境が整い始めている」と、技術面での変化などを解説した。
こうした超高速・大容量通信時代の到来を見越し、今回、登壇した3人の教授陣は2022年より「5G/6G時代のAI利活用の政策提言プロジェクト」を立ち上げ、AI/IoT技術を利用した超スマート社会のための戦略を議論してきた。その中で、主に、未来として「日本はAIを社会に実装するか」、倫理とルールとして「AIに対しての倫理とルールをどうのように定義するか」、コンセンサスとして「AIの社会実装が進む前に社会的コンセンサスが得られるか」などといった観点で議論を行ってきたとする。
「この3つの観点を踏まえた議論は、今後、白書として公表する計画」だと説明している。
これからはさまざまなAIがさまざななデバイスとネットワークでつながることとなるため、「AIコネクテッドになれば、単なる自動車の自動運転制御から、大規模な大局的運転制御に向けたダイナミックな3次元地図、エッジAI向けの大規模地図モデルの更新などによる“自動運転技術”が実現するだろうとの見通し」も解説。同様のことは医療技術でも「診断支援AIモデル学習による大量データに基づく医療技術」などが実現する見通しであることなども説明し、具体的な計画を解説した。
なお、こうしたAI技術を活用するうえで重要となる信頼されるAIについては、「透明性、説明可能性、公平性、信頼性、プライバシーとセキュリティ」などが不可欠となるとしており、今後、このような必要条件をどう実現していくのか、日本で議論を深めて行きたいとしていた。
筆者注:実際には、この必要条件などについて、日本工学アカデミーの会員と議論が繰り広げられた模様であるが、当該部分は非公開となっている