働き方改革関連法の適用により、「自動車運転の業務」の時間外労働時間が年960時間に上限規制される。ドライバーの労働環境改善が期待される反面、懸念されるのがいわゆる「2024年問題」だ。加えて、ドライバーの人手不足、高齢化といった課題も抱える物流業界では、DXによって配送の最適化を図るなど、業界全体で業務効率の向上に向けた取り組みが進められている。
そうした中、「荷物を受け取る側」に目を向けたのが、郵便ポストや宅配ボックスを扱う住宅設備メーカー・ナスタだ。同社はインターホン事業に新規参入し、“玄関先”のDXを推進し始めた。
ナスタは、2024年問題をはじめとする物流業界の課題にどのように向き合っているのか。同社 代表取締役 兼 CEOの笹川順平氏にお話を伺った。
“置き配”では再配達問題の根本的な解決にはつながらない
労働時間の制約やドライバー人口の減少など、物流業界を取り巻く環境は厳しい。一方、eコマースの需要は伸び続けている。ナスタでは、2014年にはアマゾンジャパン、日本郵便との協業で大型郵便をポストインできる住宅用ポストを開発するなど、再配達問題を解決する取り組みを進めてきた。さらに、利用状況や使用頻度などを可視化できるよう、宅配ボックスそのもののデジタル化にも取り組んでいる。では、宅配ボックスのDXが進めば、2024年問題は解決に向かうのだろうか。
笹川氏によると、コロナ禍以前、荷物の再配達率は約15%程度だったという。コロナ禍で置き配(配達を非対面で行い、指定箇所に荷物を置くこと)が増加し、一時、再配達率は約8%まで低下したものの、その後約11%まで戻り、現在に至るまで約11%前後、都市部では13~14%程度で推移している。国としても宅配ボックスの設置を推奨するなど対策は進めているものの、「置き配や宅配ボックスの設置が進んでも、再配達問題は解決しない」と同氏は指摘する。