凸版印刷は6月9日、太陽計測および情報通信研究機構(NICT)と連携して、「同一エリアに多数の基地局・端末が存在する環境における、ローカル5Gの安定運用と高速通信の実用化」に関する実証実験を行ったと発表した。
ローカル5Gは、高速大容量、低遅延通信、同時多接続が可能で外部電波との干渉による通信品質の低下が起きにくく安定した無線アクセス環境を構築できるといったメリットがあるという。
一方で、ローカル5Gの普及と共に同一エリア内に複数の基地局や端末が設置され、電波干渉を防ぐための調整業務増加によるローカル5G運用の煩雑化への危惧があるとのこと。
同社は、微細加工技術とビルドアップ配線板技術を独自に発展させ、半導体プロセスの微細化に対応した製品としてFC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)サブストレートを開発・製造している。
これらを通じ、LSIチップの高速化や多機能化を可能にする電子回路や電子部品の設計で培ってきた電磁界解析および電波伝搬シミュレータを使用し、ローカル5G基地局と電波環境改善部材の最適配置を算出した。
電波環境改善部材の配置の最適化により高周波数の電波干渉を低減でき、ローカル5G基地局が隣接する環境においても高速通信が可能なことを示唆したという。
今回の実験は2022年12月1日~2023年3月31日にかけて、神奈川県横須賀市にあるNICTのローカル5G屋内テストベッド環境で実施した。内容は、電波に関するシミュレーションおよび電波の実測の2点。電波に関するシミュレーションでは、電波伝搬シミュレータにより電波干渉の発生に関する各種条件を算出した。
電波の実測では、5G基地局を1台ずつ取り付けた隣接する2部屋における電波と、部屋間の壁全面に電波環境改善部材を各種条件で設置した後に隣接する2部屋の電波を、それぞれ測定した。
その結果、電波環境改善部材を最適配置することで、ローカル5Gの電波干渉の低減を確認したとしている。なお実験において、NICTはテストベッドの運用を、太陽計測は実証管理を、凸版印刷は電波環境改善部材の選定、シミュレータの構築と運用、電波実測を、それぞれ担当した。
凸版印刷は今後、ローカル5G関連企業などと連携し、軽量・薄膜で意匠性のある電波環境改善部材の開発を推進すると共に、電波に関するシミュレーションと電波計測を基にした電波環境改善ソリューションをローカル5Gユーザーに提供し、安全安心な高速通信環境を実現するという。