米IBMは6月6日(ドイツ時間)、企業や研究機関、政府機関が量子コンピューターにアクセスできるよう、ヨーロッパ初の量子データセンターを開設する計画を発表した。データセンターは2024年の運用開始を予定し、複数のIBM量子コンピューターが設置され、それぞれに実用規模の100量子ビット以上の量子プロセッサが搭載されるという。

データセンターは、ドイツ・エーニンゲンにあるIBMの施設に設置され、IBM Quantumのヨーロッパ・クラウド・リージョンとして機能し、ヨーロッパをはじめとした世界のユーザーは、クラウドベースの量子コンピューターの研究や探索活動用として、データセンターでサービスの利用が可能になる予定。

データセンターは、EU圏内ですべてのジョブデータを処理するなど、ユーザーが欧州データ規制の要件を継続的に管理できるように設計されている。同施設は、米国ニューヨーク州ポキプシーに次ぐ、IBMとして2番目の量子データセンターおよび量子クラウド・リージョンとなる。

現在、Bosch(ボッシュ)やドイツ連邦軍大学、Crédit Mutuel Alliance Fédérale(技術子会社のEuro-Information、Targobankを含む)、ドイツ電子シンクロトロン(DESY)、欧州合同原子核研究機構(CERN)、フラウンホーファー研究機構、ポズナン・スーパーコンピューティング・ネットワーキング・センター(PSNC)、T-Systemsなど、ヨーロッパの60以上の組織がIBM Quantum Networkに参画し、クラウド経由で量子ハードウェアおよびソフトウェアへアクセスしている。

ヨーロッパにまたがるこれらのユーザーは、材料科学、高エネルギー物理学、エネルギー転換、サステナビリティ、金融アプリケーションなど、量子コンピューターの潜在的な用途を探求している。

ヨーロッパ・クラウド・リージョンは、IBMがヨーロッパの主要な業界、学術界、政府と連携してヨーロッパにおける量子の進展や量子人材の育成を進めるうえで、重要な役割を担っている。

IBM QuantumとオープンソースのQiskitソフトウェアは、欧州の100以上の大学の授業で使用されており、同社が主催するハッカソンやワークショップ、デジタル学習を通じて、ヨーロッパの100万人の学習者が量子スキルを向上させているという。