国立天文台(NAOJ)は6月7日、すばる望遠鏡を用いた観測により、宇宙で最初に生まれた星々(ファーストスター)の中には、太陽140個分以上の重さの巨大質量星が存在したことを初めて明確に示したと発表した。
同成果は、中国国家天文台のZhao Gang教授、NAOJの青木和光教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。
ビッグバン後の宇宙で、どのように物質が集まって天体を形成するようになったのかを解き明かす上で、宇宙で最初に誕生したファーストスターがどのような星だったのかを解き明かすことは非常に重要だ。ファーストスターは、宇宙が水素とヘリウムしかない(極めてわずかだがリチウムが存在していた可能性もある)、ビッグバンから数億年後の宇宙の最初期に生まれたとされる。そして核融合や超新星爆発によって幾種類もの新たな元素を作り出し、90種類以上の天然元素が存在する宇宙を形作る最初の一歩となった。
ファーストスターには、現在の宇宙にはほとんど存在しない巨大質量星が多く含まれていた可能性が、理論的に示されている。太陽の140倍を超える質量の星は、強烈な紫外線放射で星の周囲だけでなく宇宙全体の環境を変えると同時に、通常の重力崩壊型超新星よりも爆発エネルギーの大きな「電子対生成型超新星爆発」を引き起こして次世代の星の形成にも大きな影響を与えた可能性があるという。
太陽質量の数十倍の大質量星は、進化の最後に中心部の崩壊と同時に大爆発(重力崩壊型超新星)を起こし、ブラックホールもしくは中性子星を形成することがよく知られている。それに対し、太陽質量の140倍以上の巨大質量星では中心部があまりに高温になるために、電子・陽電子対が形成されることで崩壊し、その際に起こる核融合の暴走で爆発すると考えられており(さらに、太陽質量の300倍を超えると、核融合の暴走でも星の崩壊を止めきれずにブラックホールになるという)、これが電子対生成型超新星爆発とされる。