三菱電機は6月8日、基地局の無線部共用化と低消費電力化による省エネに向けて、1台の増幅器で周波数帯域3400MHzをカバーするというGaN(窒化ガリウム)増幅器を開発し、周波数が異なる各通信世代(4G、5G、Beyond 5G/6G)での動作実証に成功したと発表した。同社によると、同様の増幅器の開発は世界初とのこと。

  • 基地局の比較

現在の4G(第4世代移動通信規格)や5G(第5世代移動通信規格)にBeyond 5G/6G(第6世代移動通信規格)を加えた新たな通信世代へのスムーズな移行には、通信インフラを担う基地局の新たな整備が必要といい、その開発が加速しているとのこと。

現在、基地局の無線部を構成する増幅器については、特定の周波数帯域での個別開発が進んできた結果、基地局には通信世代ごとに異なる無線部が設置されている。そのため、Beyond 5G/6G基地局では、省スペース化や保守・運用コストの観点から無線部の共用化への期待があり、各通信世代の周波数帯をカバーできる超広帯域化が求められているとしている。

またBeyond 5G/6Gでは、5Gを上回る通信速度での多数同時接続を実現するため、従来よりも多くのアンテナが密に配置されることから、電波制御には多くの電力が必要。そのため、増幅器には消費電力の低減も求められる。

同社は今回、これらのニーズに応えるために、増幅器の超広帯域化と低消費電力化を両立し、4GからBeyond 5G/6Gまで対応する基地局用GaN増幅器を開発した。

  • 増幅器構成の比較

その特徴として同社は、1)独自の周波数補償回路により広周波数帯域を実現し無線部共用化に貢献、2)高性能GaNデバイスの採用により増幅器の消費電力を低減し基地局の省エネに貢献、の2点を挙げる。

周波数補償回路に関しては、周波数に応じて増幅器の動作モードを切り替えることが可能な独自の周波数補償回路を増幅器に適用し、周波数帯域を同社の従来比で6倍となる3400MHzまで拡大した。

また、1台の増幅器で周波数が異なる4G、5G、Beyond 5G/6Gの各通信世代での動作実証に、世界で初めて成功したとしている。さらに、周波数帯域の拡大により、各通信世代の主要な周波数帯のカバーが可能となり、無線部の共用化に貢献するとのこと。

GaNデバイスについては、高い電力効率を持つといい、周波数帯域3400MHzにおいて、Beyond 5G/6Gで求められる水準を上回る増幅器動作時の最高電力効率62%を達成したという。加えて、従来複数必要だった増幅器を1台にまとめることで、基地局の低消費電力化を実現するとしている。