がん、バイオ領域に強みを持つ研究開発型製薬企業である中外製薬は、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を掲げてDXを推進している。その基本戦略として位置付けられているのが、「デジタルを活用した革新的な新薬創出」、「全てのバリューチェーン効率化」、「デジタル基盤強化」の3つだ。

5月15日~26日に開催された「TECH+ Business Conference 2023 ミライへ紡ぐ変革」の「Day 5 データ活用基盤」に同社 上席執行役員 デジタルトランスフォーメーションユニット長の志済聡子氏が登壇。中外製薬のデジタル基盤強化のための取り組みを紹介した。

  • CHUGAI DIGITAL VISION 2030の概要

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AI活用で創薬プロセスを革新、バリューチェーン効率化も実現

志済氏は講演冒頭で、DX推進の基本戦略における実際の取り組みを紹介した。まずデジタル活用による新薬創出については、AI、リアルワールドデータ(以下、RWD)やデジタルバイオマーカーなどを活用した創薬プロセスの革新である。例えば同社の得意分野である抗体医薬品では、標的の分子に対して最適な抗体の配列候補をAIによって生成することで、より結合力の高いものを作り出すことに成功した。AIの画像解析を用いた細胞判定や臓器の選別計測では、従来の数倍から数百倍で処理が可能な深層学習アルゴリズムを開発し、R&Dの生産性も高められたという。

バリューチェーンの効率化については、作業計画や業務アサインを自動化したスマートファクトリーを実現。最適なスキルセットを持つ社員を配置したり、リモートで作業支援を行えるよう整備したりといった部分でデジタルを活用している。また、顧客インターフェイスの改革にも取り組んでいる。MRと呼ばれる医療情報担当者が行う医療関係者とのコミュニケーションにデジタルマーケティングの要素を取り入れた。さまざまな情報を分析することによって、MRの適切なアクションを提案し、営業活動の支援につなげている。

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