レッドハットは6月6日、今年5月に開催された年次グローバルイベント「Red Hat Summit 2023」で行われた新発表を紹介する説明会を開催した。説明会では、「Red Hat Enterprise Linux」「Application Services」「Red Hat OpenShift」「Red Hat Ansible Automation Platform」「Red Hat Device Edge」と5つの製品について、説明が行われた。
昨今のAIブームも背景に、コンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」と運用自動化プラットフォーム「Red Hat Ansible Automation Platform」では、AIを活用した機能拡張が発表された。そこで本稿では、両製品の機能拡張について紹介する。
コンテナ環境下のAIとML活用推進する「Red Hat OpenShift AI」
OpenShift / Kubernetes アーキテクトの石川純平氏は、Red Hat Summit 2023において、「Red Hat OpenShift」に関しては、AI、Developer Productivity(開発者の生産性)、セキュリティの3つのカテゴリーについて、発表が行われたと説明した。
これらのうち、やはり目玉と言えるのは、コンテナ環境におけるAIと機械学習(ML)活用を推進するプロダクトファミリー「Red Hat OpenShift AI」だろう。同ファミリーでは、AI/MLモデルの学習・推論を行うプラットフォームに加えて、パイプラインとサービングの機能を提供し、MLモデルのパフォーマンスを監視して、一連のライフサイクルをサポートする。
加えて、OSSのPython/Javaのライブラリ・処理基盤「Ray」を活用し、大規模モデル(LLM)の分散学習やファインチューニングを実施する基盤を提供することが計画されている。
「OpenShift AI」の製品としては、MLプラットフォーム「Red Hat OpenShift Data Science」が提供されている。同製品は、データサイエンティストがセルフサービスで利用できるコンテナ化された実験環境を提供し、作成したAI/MLモデルをAPIサービスとして提供する。今後、製品が追加されていく予定だ。
そのほか、開発チームのコラボレーションを加速するポータル「Red Hat Developer Hub」も発表された。これにより、CNCFのIncubatingプロジェクトであるBackstageをベースとした開発者ポータルがOpenShiftで利用可能になる。同製品は7月にプレビューが公開される予定。
石川氏は、「プラットフォームエンジニアリングが流行していることから、OpenShift上で、開発者向けの製品を統合して提供する。昨年10月より、Backstageの開発に参画しており、その成果が発表された」と説明した。
開発者を支援する生成AIサービス「Ansible Lightspeed」
シニアスペシャリストソリューションアーキテクトの中島倫明氏は、Red Hat Summit 2023で発表された「Ansible Automation Platform」に関する大きなトピックとして、「Ansible Lightspeed with IBM Watson Code Assistant」と「Event-Driven Ansible」を挙げた。
前者は、開発者を支援する生成AIサービスだ。同サービスは、初心者がタスクを自動化するのを容易にする一方、経験豊富なユーザーのタスク作成の負担を取り除くことで、自動化を促進する。
Ansible Lightspeedは、Project Wisdomイニシアチブの次の段階で、今年後半に一般提供される予定のWatson Code Assistantと統合され、IBM Foundation Modelsにアクセスして自動化コードを迅速に構築する。
具体的には、開発者が実現したいことを指示すると、指示に合わせたコードをAnsible Lightspeedが生成する。また、ユーザーがドメインの専門知識をAnsible Playbookとして作成・編集するためのYAMLコードに変換しやすくなっている。ユーザーはモデルのトレーニングを支援するため、フィードバックを提供することも可能。
一方、「Event-Driven Ansible」は、他のシステムが発信するイベントに基づくAnsibleの自動化シナリオの自律実行を実現する仕組みだ。「Ansible Playbooks」「Ansible Rulebooks」「Documentation」から構成され、Red Hat Ansible Automation Platform 2.4から利用できる。
一般的なシステム運用では、発生したイベントに対し、判断と作業依頼、その以来の受付、作業を人間が行う。これに対し、従来のAnsibleでは、作業の依頼受付から作業までをカバーしている。さらに、これからのAnsibleでは、「Event-Driven Ansible」がイベントに対する判断と作業依頼を担い、人間がやることを低減する。
中島氏は、Event-Driven Ansibleについて、「以前からこのようなシステムを作れないことはなかったが、組織の壁があった。監視の運用は運用チームが行うが、自動化しようとすると、サーバやネットワーク担当が行うことになる」と語った。