大阪公立大学(大阪公大)は6月6日、食中毒の原因菌として注目されるProvidencia属細菌の一種である「Providencia rustigianii」や「Providencia alcalifaciens」が持つ病原遺伝子が、細菌細胞内でどのように伝播するのかを明らかにしたことを発表した。

同成果は、大阪公大大学院 獣医学研究科の山﨑伸二教授、同・Sharda Prasad Awasthi特任講師、同・Jayedul Hassan大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、米国微生物学会が刊行する病原性細菌などによる感染症に関する全般を扱う学術誌「Infection and Immunity」に掲載された。

腸内細菌科細菌の一種であるProvidencia属細菌は、現在少なくとも10菌種あることが知られている。そのうち、Providencia alcalifaciensを含む3菌種は、胃腸炎や尿路感染症患者から分離されているが、それらの病原因子については未解明な部分もあるという。

これまでの研究で、国内の小児胃腸炎患者から新規にProvidencia rustigianiiを分離することに成功してきた大阪公大の研究チームは、同菌がヒトの胃腸炎の原因となる可能性や、同菌が食中毒の原因となる病原遺伝子である「細胞膨化致死毒素遺伝子」(細胞を膨化させた後、さらに細胞を致死させるタンパク質毒素)の一部を保持していることを明らかにしている。そこで今回の研究では、細胞膨化致死毒素遺伝子の全長や配列情報、毒素タンパク質の病原性について解析を行ったとする。

その解析により、新たに発見されたProvidencia rustigianiiだけでなく、今まで食中毒を引き起こすことが報告されていたProvidencia alcalifaciensの細胞膨化致死毒素遺伝子も、プラスミド上に存在することが発見された。なおプラスミドとは、細菌の染色体DNAとは別に核外に存在し、生命活動に必須でない(病原因子や薬剤耐性)遺伝子を保持した染色体外DNA分子のことをいう。

またこのプラスミドは、同種のProvidencia rustigianiiだけでなく、Providencia rettgeriや大腸菌など、他菌種の細菌にも伝播するため、毒素遺伝子を持ったプラスミドを得た菌も細胞膨化致死毒素を産生することが確認されたとする。

  • プラスミドを介した細菌間での病原遺伝子伝播の様子。

    プラスミドを介した細菌間での病原遺伝子伝播の様子。(出所:大阪公大プレスリリースPDF)

研究チームによると、Providencia属細菌の病原遺伝子は、プラスミドを介してほかの腸内細菌科細菌に伝播することから、今まで病原性がないと思われていた腸内細菌科細菌も含めて、この細胞膨化致死遺伝子を指標に調べていく必要が出てきたという。さらに、このプラスミド上にほかの病原遺伝子や薬剤耐性遺伝子が存在する可能性についても、今後解析していく必要があると考えているとしている。