日本総合研究所(日本総研)とアビームコンサルティングが6月6日に発表したプロアクティブ人材に関する実態調査の結果によると、従業員のプロアクティブ化が企業価値向上に貢献し、自律型人材育成のキーはミドル層にあるという。
同調査は両社が1月6日~12日にかけて、企業に勤務する従業員2万400人を対象にWebアンケートにより実施したもの。
両社はプロアクティブ行動の構成概念を、キャリアを自ら築いていくための自律的な行動カテゴリとなる、革新行動、外部ネットワーク探索行動、組織化行動、キャリア開発行動の4つと定義する。
同調査では、これらのプロアクティブ行動の実践度合いを5段階で測定して数字が大きいほどプロアクティブ度が高いとし、プロアクティブ度が4.0以上の人をプロアクティブ人材、2.0以下の人を非プロアクティブ人材としている。
まず、プロアクティブ人材が企業にとって有益な人材かどうかを分析するため、プロアクティブ度とアウトカム(社会や業績に与える影響)の関係性を見るため、組織内における自身の評価を示す職務成果、自身のキャリアの実現度合いを示す自己実現、仕事に対する意欲・熱意などを示すワーク・エンゲージメントの3要素をアウトカムとし、それぞれプロアクティブ人材および非プロアクティブ人材ごとに数値を調査した。
その結果、3要素全てにおいて、プロアクティブ人材が非プロアクティブ人材の2倍近くの数値を示し、プロアクティブ度の高さがアウトカムの高さに直結することが認められたという。
プロアクティブ度について年齢別や男女別の違いも調査したところ、20歳代から40歳代に向けて下がっていき、その後60歳代に向かって持ち直していく傾向があるとのこと。特に、業務上中核的な存在であることが多い40代が最も低くなっており、低下幅は男性の方が大きい。
転職回数とプロアクティブ度の相関関係を見ると、転職回数が0回の割合は、プロアクティブ人材が47.2%、非プロアクティブ人材が40.7%だった。半面、転職回数が4回以上だった人の割合は、プロアクティブ人材が7.3%、非プロアクティブ人材が9.5%であり、定着率はプロアクティブ人材の方が高いことを示している。
プロアクティブ度は環境によって変化する可能性があるかを分析した結果、「サポートがあり、チャレンジを認めてくれる職場であること」(職場特性)および「裁量があり、やりがいのある職務であること」(職務特性)という環境において、従業員のプロアクティブ度が高くなるという関係性が確認できたという。
今回の調査結果に関して両社は、プロアクティブ人材のワーク・エンゲージメントは高く、企業業績への貢献と自ら思い描いたキャリアの実現を両立している傾向が見られ、企業にとっても本人にとっても理想的な「やりたいことを、業務を通じて実現し、成果が伴っている状態」にある人材と評価できるとしている。さらに、離職という企業にとってのリスクが低い人材であることも注目したい点だという。
半面、プロアクティブ度は20代をピークに年齢と共に下がる傾向があり、放置すると下がる恐れがある一方で、マネジメント次第で維持・向上させることが可能とも指摘する。
今後は、プロアクティブ度を人的資本への投資対効果の測定指標として活用し、上司が個々のウィル(意志)に寄り添いながら、それぞれのプロアクティブ度を高めていくことが企業価値の向上に不可欠となるとしている。