5月24日~25日の2日間にわたり、フィンランド・ヘルシンキにおいて「Sphere 2023」を開催したWithSecure(ウィズセキュア)。本稿では、初日のトリを務めたWithSecure CRO(Chief Research Officer) Mikko Hypponen(ミッコ・ヒッポネン)氏の「Artificial Evil(人工的な悪)」と題したキーノートを紹介する。

  • WithSecure CRO(Chief Research Officer)のMikko Hypponen(ミッコ・ヒッポネン)氏

    WithSecure CRO(Chief Research Officer)のMikko Hypponen(ミッコ・ヒッポネン)氏

ペンタゴン爆発フェイク画像の意図

冒頭、自身のディープフェイク動画とともに登場したヒッポネン氏。OpenAIの「ChatGPT」やMicrosoftに加え、Googleの「Bard」、画像を生成するMidjourney、Stable Diffusionなど、昨今では生成AIが世間を席巻している状況をふまえ「AIは、その歴史の中で夏もあれば冬もありましたが、現在は最も暑い夏を過ごしている」と述べた。

  • ヒッポネン氏のディープフェイク動画

    ヒッポネン氏のディープフェイク動画

そして、同氏はペンタゴン(米国防総省)で爆発があったというフェイク画像を投影し、次のように話した。

「進化したAIはわれわれに利益をもたらす一方、大きなリスクも与えます。フェイク画像はTwitterの認証済みアカウントで拡散されたものです。しかし、なぜこんなことをしたのか?誰がこれをやったのか?なぜ、うまくいったのでしょうか?サイバー犯罪の最も一般的な動機は、決してお金ではありません。お金を稼ぐために偽の爆発についてのツイートがトレンドになることで、どうやってお金を稼ぐのでしょうか?」(ヒッポネン氏)

世界で行われている株式取引の大半は自動化されており、売買の動向や証券取引所の発表を機械学習で読み取り、ポジティブなニュースか悪いニュースかで売買の意思決定をしていると同氏は説明。また、トレンドや証券取引所のリリースを追うだけでなく、Twitterフィードを含むニュースも追っているとも述べている。

「この生成画像が拡散されたとき、S&P 500は一瞬急落して10分以内に回復したものの、このツイートをした人は地球上で唯一、この出来事がいつ起こるか正確に知っていた人でした。そしてS&P 500が10分間急落し、その後元通りに回復する……。それが起こるタイミングを正確に知っていれば、大儲けができます」と、同氏は指摘した。

“AI革命”はインターネット革命を超えるもの

ヒッポネン氏は、自身が初めてAIに関する雑誌を読んだ時期に触れ「13歳の時でした。1983年のことです。ちょうど40年前ですが、彼らは多くのことを正しく理解していました。というのも、いつの日か大規模な機械学習フレームワークを実行するために十分なコンピューティングパワーとストレージ能力を手に入れるだろうと予測していました」と振り返る。

例えば、世界最高のチェスプレイヤーを打ち負かすほどの賢さを持つコンピューターが登場する日が来るかもしれないと予測されいたが、これは1997年に実現している。十分な計算能力を持つようになるという予想は、実現までに40年かかっている。同氏によると、最近になってすべてのことができるようになる閾(しきい)値に到達したという。

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