アンシス・ジャパンは5月24日、「人とくるまのテクノロジー展2023」開催に併せて自社の最新の先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)シミュレーション検証環境、およびMBSE(Model-based Systems Engineering)による電動パワートレイン設計開発の動向などについての説明会を開催。
アンシス・ジャパンの技術部テクニカルアカウントマネージャの下村将基氏、同 アンシス・ジャパンマーケティング部部長の柴田克久氏、Ansys Regional Pre-Sales Support Principal Application Engineerを務めるトゥシャ・サムバラン氏の3者が登壇し、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)へのシフトに対応する車両開発の在り方についての課題などについての説明を行った。
一般的にADAS・ADシステム開発には、センサモジュールの設計およびプラットフォームの統合、センサデータの妥当性および機能の安全性を確認する作業が必要となるが、これら作業には80億マイルの実路試験が必要とされ、実車でそれを実施するには膨大な時間がかかることが課題となっている。
そうした中、アンシスでは自社がもつ精度の高いソリューションを活用し設計段階からシミュレーションで行えるような技術を開発してきており、それにより試験速度が1000倍に向上し、ADの開発速度も50%向上したとする。
同社では現在、割り切った開発戦略を進めており、このADAS・ADに対しドライビングシミュレータを自社ではもたず、先行しているパートナーの有するツール群と自社のソリューションを連携させることでパーフェクトなシミュレーション環境の構築を目指しているとしている。以前はすべて自前で構築することを目指していたが、すでにユーザー側が持つ膨大なデータがある中で、そこに対して新しいソリューションを開発し提供して採用を目指すよりも、そうしたADAS・ADソリューションで必要となるセンサ群や安全分析に特化したソリューションを提供する戦略にシフトしたという。ADASやADに必要とされるセンサや安全分析で強固なソリューションを構築し、ユーザーのドライビングシミュレータに組み込んでもらうことで、日本のADAS・ADの発展につなげたいとする。
すでに同社が提供するそうした尖ったソリューション群は、自動車メーカーから高く評価されており、メルセデスやBMWなどが採用していることを公表済み。下村氏は、なぜアンシスがそういった自動車OEMメーカーに選ばれたのかについて、「コンピューティングにおける精度、効率、自動化の仕組みがうまくいったからではないか」と説明する。
また、下村氏は先般開催された上海モーターショーに参加した日本のOEM関係者から、日本の自動車産業がADAS・AD分野で他国から大幅な遅れをとっていることを感じたという話を聞いたことを紹介。SDVは日本が迎える試練だと説明する一方で、日本が世界に一石を投じるチャンスがあるのもSDVだとし、その実現のために必要なのが自動車開発のV字プロセスの右側をいかに左側に寄せられるか(シフトレフト)が重要になってくることを強調した。
さらに、サムバラン氏はソフトウェアやハードウェアの開発がいくつもの専門分野にまたがり、複雑なシステムを構築する必要がある電動パワートレインの開発において、MBSEというアプローチ方法の重要性を説明。MBSEを導入し、使いこなせれば、開発時間が短縮 されることに加え、開発コストの低減も実現できると力説したほか、MBSEと仮想検証のアプローチこそがV字プロセスにおけるシフトレフトに有効であることも強調した。
なお、アンシスが提供するソリューション群はツールチェーンとなっており、ワンストップオペレーションでできるところに大きな強みがあると同社では説明しており、トータルで価値を提供していくことで今後も日本の自動車産業の成長を支援し、パートナーたちとともに世界に対する新たな価値創出を実現したいとしている。