ガートナージャパン(Gartner)は6月1日、アプリケーションの近代化では正しいアーキテクチャの選択が重要との見解を発表した。
Gartnerが実施した調査では、2023年に日本企業の39%がアプリケーションの近代化への支出を、48%がクラウド・プラットフォームへの支出を増やす意向を示し、33%の日本企業がレガシー・インフラストラクチャとデータセンター・テクノロジへの投資を減らし、近代的なテクノロジ・プラットフォームに移行すると回答したという。
同社は、アプリケーションの近代化に関する6つの一般的な推進要因として、ビジネス上の推進要因3つ(ビジネスへの適合性、イノベーション、アジリティ)とIT上の推進要因3つ(コスト、複雑性、リスク)を定めている。
シニア ディレクター アナリストの飯島公彦氏は、次のように述べている。「これらの6つの推進要因は、考えられる根本原因を示しています。つまり、コスト、複雑性、リスクに関する問題は、アプリケーションの構築とサポートに用いられるテクノロジが原因であり、ビジネスへの適合性とイノベーションのサポートに関する問題は、機能が原因であり、アジリティと複雑性に関する問題は、アプリケーションのアーキテクチャと構造が原因である可能性が高いと考えられます。アプリケーションの近代化は、それらの原因に基づいて、最適なアプローチを選択することが肝要です」
2022年9月にGartnerが国内で実施したユーザー調査では、約7割がアプリケーションに従来と異なる何かが必要であると回答したという。理由の1位は「アプリケーションのアーキテクチャが硬直的で、変化に迅速に対応できない」(43%)、2位は「現状業務と合致しなくなっている」(20%)。また、変革が必要とする回答者が目指すアプリケーションとして最も多く挙げたのは、「変化や多様性に応じて容易に組み換えができるアプリケーション(コンポーザブル・アプリケーション)」(48%)であった。
一方、変革に実際に取り組んでいる回答者のアプリケーション変革の内容としては、「ビジネスモデルやビジネス・オペレーションの全体像の策定・見直し」(42%)が最多となり、「アーキテクチャの見直し」は19%と少数派であった。Gartnerはこれについて、既存アプリケーションのアーキテクチャ変革が容易ではないことに加え、アーキテクチャのスキルセットを持つ人材そのものが日本企業において不足していることも背景にあるとみている。実際、アーキテクチャ変革が必要とする回答者が「必要」としている項目に最も多く挙げたのが、アーキテクト人材であったという。
飯島氏は次のように述べている。「日本企業にとって、アーキテクチャの変革が重要になってきていますが、『正しくアーキテクチャ変革を行う』だけでなく、『正しいアーキテクチャを目指した変革』に留意する必要があります。そのためには、オペレーションの見直しの中で、業務機能を細かい単位で吟味していくことで、正しいアプローチを選択し、その先に目指すコンポーザブル・アプリケーションの実現につなげていくことが重要です」